子どもの頃、文具店が好きだった。
雑貨屋が好きな大人は、きっと子どもの頃文具店が好きだったと思う。
一番よく通った近所の文具店は、とにかく落ち着かない店だった。
いま思うと子どもの万引きを警戒していたのだろう。
お店に入ると「ピロピロピロ~ン」とセンサーが何度も鳴り、奥からハイハイと出てきたおばあさんが「何が要るの?」と必要なものをせかせかと尋ねてきた。
すぐに会計をしてすぐに店内を立ち去らないと、その後も何やかや話しかけてきて、自由に見させてくれなかった。
あれは何というお店だったか。
古い家の匂いがする店内も、おばあさんの声も思い出せるのに、
おばあさんの苗字がついたお店の名前だけ、なぜか思い出せない。