アメリのデザート

先日のこと。
ずいぶん昔によく作ったお菓子を久しぶりに作る機会があって、レシピの古~い切り抜きを貼ったノートを見ていたら、20年ぐらい前の自分が書いた、別のお菓子のレシピが目に止まった。

大学時代に少しだけバイトした店で教えてもらった、クレームブリュレのレシピ。
映画「アメリ」が流行るちょうど直前で、私はその店で初めてクレームブリュレを知った。
あまりに美味しかったので、レシピを教えてもらえないかとシェフに聞いたら「ガスバーナーないとできひんで?」と言われたけれど、「いいんです!」と言い切って教えてもらったレシピ。
それなのに結局、20年放置することになった。

ふと思いついて、夫に「ガスバーナーなんて、うちにないよね?」と尋ねてみた。

夫は、時々意外なものを隠し持っている。
特に道具系。
一体何に使うの?というようなマニアックな道具が、時々夫の持ち物コーナーからドラえもんのように出てきて、そういうときいつも「結婚すると自分では絶対思いつかないものに出会えて面白いな~」と思うのだった。

しかし、ガスバーナーはたぶんないだろう。
と思っていたら、夫「何に使うの?」
え?まさかあるの?
「かくかくしかじかで」と話すと、夫がおもむろに立ち上がり、押し入れの奥からガスバーナーが現れたのだった。

聞けば、炭火の着火用に買ったのだという。
チャッカマンとかじゃないあたりが夫らしい。
夫も、「まさかお菓子を作るのに使う日が来るとは思わなかった」と言っていたけど。

そんなわけで、古い古いレシピが、20年ぶりに日の目を見たのだった。

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完成したクレームブリュレは、自分で言うのもナンたけど激うま。
それもそのはず。
そのレシピは、そのシェフが最も得意としていたデザートだったのだから。

オープニングスタッフとして入ったバイト先のその店は、何年かの後に予約のなかなかとれない人気のフレンチになった。
シェフはすごかったんだなぁと、何年も後になって初めて分かった。
得意デザートのレシピを聞いておいてよかった。
シェフはもうひとつ、ガトーショコラもよく作っていたのだけど、こちらは聞かずじまい。
ガトーショコラの材料を計るのはいつも私で、分量も暗記していたし手順も見て知っていたから、いつでもできると思って、結局メモしないまま忘れてしまったのだった。
あれは惜しいことをした。

もう遠くに引っ越してしまったけれど、もし近くだったら、今の方が断然あのお店で働きたい。
接客も料理も何もかも、大人になった今の方が比較にならないくらい学べるはずだから。