知らなかった頃には戻れないこと

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5ヶ月の息子が寝返りをするようになった。

それまでは何週間もの間、背中を弓なりに反らせたり横向きになったりはするものの、寝返れそうで寝返れないという状態がずっと続いていた。
それなのに、いったんできるようになってしまうといとも簡単にくるくると回る。

それを見ていたらふと思った。
人間には「できるようになってしまうと、できなかった頃には戻れないこと」がある。
あるいは「知ってしまうと、知らなかった頃には戻れないこと」。

寝返り。
立って歩くこと。
自転車の運転。
文字を読むこと。
数を数えること。

それらの前後では何かが決定的に違ってしまっていて、
たぶん、できるようになることと引き換えに、見えにくい何かが失われているのだと思う。
たとえば、絵本の文字を読むことなしに絵本を味わうような能力が。

「できるようになる」ことは、遅かれ早かれできるようになる。
いつかできるようになるのであれば、
それはあんまり急がなくていいから、いつかなくなってしまう「できなかった頃」を、大切にしてあげたいと思う母なのだった。