ガレットデロアを食べる日

1月の第一日曜日、夜に用事があって四ッ谷まで出かけた。
寒波が来たのか、予想以上に寒い夜。

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行く先々で「ガレットデロアを食べよう!」みたいな宣伝文句とともにガレットデロアが売られていて、なんだかすごくポピュラーなイベントになったんだなぁと、ちょっとびっくり。
それとともに、初めてガレットデロアを食べた冬のことを思い出した。

数年前のお正月。
訳あって、友達につき合ってもらい真冬の北海道傷心旅行に出かけたのだった。

宿は、一度泊まってみたかった高級オーベルジュ
たった4室しかないその宿には贅沢な共有サロンがあって、そこにはふかふかのソファと、自由に飲んでいい高級酒やペリエが並ぶバーカウンターがあった。
全面ガラス張りの窓の外には、深く積もった雪が暗闇にぼぅっと白く浮かんでいて、
それを眺めながら、友達と軽く作ったお酒を飲んでまったりしていたら、その日もう一組だけいた宿泊客らしい二人連れがサロンにやってきたのだった。

びっくりするほど端正な顔立ちの美青年と、それより少し年上の、がっしりとした外国人男性。
おそらく彼らはカップルだったのだろう。
なんとなく、ちょっとした行き違いで喧嘩をしているのかな?というような雰囲気だった。
その美青年が親しげに話しかけてきて、「良かったら一緒にガレットデロアを食べませんか?僕らだけじゃ食べきれないし」と誘ってくれたのだった。

お腹はいっぱいだったけれど、不思議な二人組に興味津々で、ガレットデロアをいただくことにした私たち。
6つに切り分けたピースの中で、最初に入れたフォークであっさりと陶器片を引き当てたのは、私だった。

「何かいいことあるかなぁ」と言う私に、青年とその恋人が、少し酔っ払いながら「あるよ。初めてで引き当てたんだから、絶対あるよ」と拍手してくれたのを覚えている。
誘ってもらった行きずりの身なのに陶器片を当ててしまって、なんだか申し訳ない気持ちだった。

最近になって気づいたけれど、
夫と会ったのは、その2ヶ月後だった。

ガレットデロアが、まだそれほどポピュラーではなかった頃のお話。