ひさびさカオルコ

2,3前にあった東大生による集団強制わいせつ事件から着想したという、姫野カオルコの新刊を読了。

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あくまでも「着想」なので、ノンフィクションではなく小説ではあるんだけど、加害者の背景とかがそこそこリアルで、かなり読みごたえのある一冊だった。

裸の被害者にカップラーメンの熱湯をかけたとか、そういうスキャンダラスな面ばかりがクローズアップされた事件で、私もそういうイメージを持っていたけど、
これを読んでみたら、あぁ、この事件は「わいせつ事件」ではなく「虐待事件」だったのだな、と思った。
だからこそ、加害者らが自分は無実だ(わいせつ行為はしていない)と思ってしまったんだろう。
本当は、わいせつよりももしかしたらもっとひどい行為(心理的な虐待)を、行っていたにもかかわらず。
そういう意味では、起訴される罪名ってすごく重要だ。

少しだけ惜しいな、と思ったのは、東大生のことをディスりすぎている(ように読める)ところ。
「東大生」という記号がこの事件で決定的な役割を果たしたであろうことは確かなのだけど、
「東大生」を類型化しすぎたことで、エリートへのやっかみとか偏見と取られることがあるだろうな...というのが、唯一ちょっと残念な点だった。

でもやっぱり姫野カオルコはすごい。
ずっしりと持ち重りのする一冊。

装丁に使われてた絵も、ナイスセレクトだった。