邂逅

15年ぐらい前、姉が関東に住んでいた頃、甥っ子に会いにちょくちょく遊びに行っていた。
ある日、食料品を買いに行った近所のスーパーでたまたま「はんぱモノ市」みたいなのがやっていた。
スーパー特有の、ぱっとしない幟が立てられたコーナーに、どこにでもありそうな器たちが所狭しと並んでいたのだけれど、通りすがりになんとなく覗いた私たちの目に、ひときわ鮮やかなターコイズブルーのお皿が飛び込んできた。
一枚500円ぐらいの値段の割に安っぽくなく、「これ、可愛いよねぇ?!」と二人で盛り上がって、最終的に姉が四枚購入。
私も欲しかったのだけれど、持ち帰るのが重いのと、当時は独り暮らしで器は足りに足りていたので断念したのだった。
しかしその後、姉の家に行くたびにそのお皿はヘビロテで登場し、とにかく使い勝手がいいので「やっぱりこのお皿いいよねぇ。私もあのとき買っとけばよかった!」と毎回のように羨ましがる羽目になった。

そのお皿に、突然、なんのゆかりもない地で15年も経って再会することになろうとは。

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あるショッピングモールで、ユニクロに行った帰りにエレベーターを待っていたら、ふと食器を売っているお店が目に入った。
インテリアショップみたいなおしゃれな店では全然なくて、昔ながらの急須なんかがガサッとたくさん置いてあるお店だったのだけれど、帰りのバスまでちょうど10分ぐらい余裕があったので、フラフラッと冷やかしに立ち寄った。
「まぁ普通だね~」と思いながら店内をぐるっと一巡りしたそのとき、鮮やかなターコイズのお皿が目に飛び込んできたのだった。

有名ブランドのものでもないし、メーカーも何も分からないけれど、とにかく似ている。
あのお皿じゃないかもしれないけど、この色と形は絶対使える。
しかも一枚630円。
これは買いだろうと、急いで二枚購入、冷やかしに寄ったはずが、最後はバス停にダッシュする羽目になった。

家に帰ってから、裏に小さな窯元?の印があることに気づき、姉に写真を送って確かめてみたら、なんとやはり、全く同じお皿だった。
まさかの再会で、姉もびっくり。
あんな、通りすがりに覗いたはんぱモノ市のお皿に、まさかまた15年後も通りすがりに出会うとは!

あの頃の暮らし、あの頃の私たちや甥っ子の姿が急に浮かんできて、なんとも言えない気持ちになった。
再会したのは、お皿だけではなくて、まだ20代だった頃の私たちだった。