ぐるんぐるん

朝起きて、ベッドでしばらく息子とじゃれ合っていたら、息子が頭の上に乗っかってきたのでそのまま持ち上げようとしたら、その瞬間。
突然世界がぐるん!と回った。
久しぶりのめまいだった。それも相当な。

慌てて息子をベッドの上(とおぼしき方向)に下ろして、目をギュッとつむり、強烈なめまいの嵐が過ぎ去るのを待つ。
収まりかけたところで頭を少し傾けてみると、またまた猛烈な回転。

初めてなったのは確か10代の頃で、そこから数年に一度くらい、朝起きるとめまいがする日があった。
ただ若い頃はそれほど程度がひどくなくて、数時間後には普通になっているので、なんだろう、何年かにいっぺんぐらいあるな、程度にしか思っていなかった。
それが、出産後半年ほど経ったある日まったく立ち上がれないほどのひどいめまいに襲われて、初めて耳鼻科を受診したところ、「良性発作性頭位めまい症」というものだと診断されたのだった。

頭の向きによってめまいがするというもので、耳の中にある石が、通常の位置から外れて三半規管の中に入り込むことによって引き起こされるのだそう。
対策としては、耳石が元の位置に戻るよう頭を動かすか(←これはめまいが起きているときには酷すぎて絶対ムリ)、普段から予防的な体操をしておくか、ぐらいしかないみたい。
耳石は三半規管の中の液体に溶けていくらしいので、時間が経てば収まりはするのだけれど、何が怖いって、いつその石が外れて急なめまいに襲われるかわからないのが怖いのだった。

とにかく今回は朝から夕方くらいまで、息子のごはんを這うようにして(頭の位置をなるべく動かさないように傾きながら)作る以外は、ほとんど寝て過ごした。
幸い夫が休みで、出先から早めに帰ってごはんも買ってきてくれたので、後は任せてゆっくり養生。
今回は夜にはだいぶ良くなってきて、めまいがしたときの頭の方向に向けても、発作は起きなくなっていた。

翌日は息子の用事で出かけなければならず、おそるおそる...という感じで外出。
念のため、自転車は怖いのでバスで。

バス停までの道は紅葉した落ち葉でいっぱいで、興奮して走りたそうな息子を引き留めながら、ゆっくりそろそろと歩いた。

f:id:coffeesofa:20191126015214j:plain

発作が起きた日、数時間経って息子が急に近くに来て「ママ、ごめんね。頭、やって、ごめんね」と言うのだった。
あぁそうか。「自分が頭の上に乗ったから、ママの具合が何かおかしくなった」と思っていたんだ...と思ったら、そしてそれをママが少し良くなる何時間か後まで言えずにいたんだと思ったら、息子が可愛くて不憫で、胸がキューッとした。
「ちがうちがう、まるちゃん(←息子)が悪いんじゃないよ。まるちゃんが上に乗ったからぐるぐるになったんじゃなくて、ママ時々なるんだよ。大丈夫だよ。まるちゃんぜんぜん悪くないよ」と言ってあげると、ちょっとホッとした顔になって、「まるちゃんじゃないの...」。
その後息子をギュッと抱き締めてあげると、ようやく安心したようだった。

子どもが小さな胸に不安を抱えている姿ほど、守ってあげたくなるものはない。