女の子の夢

東京都現代美術館で開催中の、ミナペルホネン「つづく」展。
入り口の展示で、もう最初からテンションがだだ上がった。

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見たことのあるあの布、この布がこれでもかと並んで出迎えてくれる。
実際見に来てよかった...と思うのは、この、布の質感や厚みを間近で見られる瞬間。

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いろんなコーナーがあったけれど、やっぱり圧巻は、ミナの服が並んだこのコーナー。

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ため息が止まらなかった。

これは、女の子の夢の世界だ。

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小さい頃、バービー人形の着せ替えが大好きで、もっとたくさん着替えがほしいといつも思っていたことを思い出した。
ひとつの洋服の中に、いろんな色やカット、素材、ギャザー、刺繍やボタン、ポケットといった細部が詰めこまれた、お人形の服。
ひとつひとつが可愛すぎる洋服を組み合わせて、ジャケットを合わせてみたり、上下の組み合わせを変えてみたり。
そういう女の子の夢が、リアルサイズの服として実現されている、まさに夢の中のような空間だった。

細部まで丁寧に、考え抜いて、お気に入りのひとつの洋服を作ることは、たぶん洋服好きな人にはできる。
だけど、この量。
ひとつの洋服にかける、その熱量を何百、何千着の洋服作りに注ぎ続けることって、並大抵ではない。
その熱量が、この空間にいるとじんじん伝わってくる。

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村上春樹の短編『トニー滝谷』の洋服たちのこともふと思い出した。
妻亡き後遺された、妻が愛した大量の洋服たちのお話。
読んでいると洋服への愛がものすごく伝わってきて、服が欲しくてたまらなくなるのだ。

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ミナの洋服は、全て修理に対応しているという。
上の写真は、元よりも良くなるように施された、ジーンズの補修。

ひとつのものを大事に大事に、愛着をもって使い続けることの素敵さを、あらためて感じ直すような展覧会だった。