おばあちゃんファッションは奥が深い

近所でフリーマーケットが開催されるというチラシをたまたま見たのは、出店締め切りの当日だった。
ずっとメルカリで売りたいと思いつつ、作業が億劫で置いたままになっていたモノたちを売るチャンスだ!と、すぐに申し込み。
無事出店が受理されて、曇天の寒い週末、私と夫と息子は、即席フリマ店主となったのだった。

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とはいえ、開かれるのはたった二時間、しかも初開催なので周知もそんなに広くは届いていない。
近所の人たち(高齢者多し)中心の、こぢんまりとしたイベントだった。

近所に住む夫の知り合いAさん(70代女性)にも事前に声をかけ、もし出したいものがあれば一緒に売りますよ~と言ってみたところ、顔の広いAさんの知り合いからもいくつか「売ってほしい」依頼が舞い込んだ。
その中で、閉店20分前に洋服を持ってきたおばあちゃん(Bさん)がいた。
客足も減った頃だったのと、地味~な洋服で人目にもつかなさそうだったので、さすがに売れないだろうと思ったけれど、カートを押して持ってきてくれたおばあちゃんを断るのも忍びないので、「残り時間も少ないので売れないかもしれないけど...」と、とりあえず並べるだけ並べることにした。

ところが。
そこから5分もしないうちに、通りかかった別のおばあちゃん(Cさん)がその洋服に素早く目を留めた。
「それ、ちょっと見せてもらっていい?」
それまでの一時間半余でも立ち止まって手に取る人は数人しかいなかったというのに、たった5分で!!
おばあちゃん服はおばあちゃんを呼び寄せる!!

驚きながら見ていると、そこへAさんBさんがちょうどやってきた。
「あ、いまこれ見てくださってます!」と出品者Bさんに言うと、顔の広いAさんはCさんとも知り合いだったようで、おばあちゃんABCは俄かに盛り上がった。
Bさんの出品したのは、私から見ると何の変哲もない本当に地味~な黒のジャンパーだったのだけれど、それがなぜか、おばあちゃんたちには受けがいい。
もうひとつの(やはり何の変哲もない地味な黒の)コートと比べ、「こっち(ジャンパー)の方がいい、絶対」というところもおばあちゃんABCの意見は一致。
おばあちゃんにしか分からない使い勝手のよさ、みたいなものがあるのだな、きっと(笑)

結局、その洋服はその日一番の高値で売れていったのだった。

いつかおばあちゃんになったら、私もあの服の良さが分かる日が来るのだろうか。