十年前

こんな時節なので、家にこもっていろんな整理をしていたら、ふと、昔友達と東京に遊びに行った春のことを思い出した。
3月も末のことで、考えたら、それはまさにちょうど十年前の今頃だった。

当時あった(今もあるのかな)「トーキョーブックマーク」という、関西発のお得な東京観光プラン。
ほぼ新幹線往復料金だけでホテルもついてくるようなプランで、友達と二泊したのだった。

打ち合わせをしたのだったかどうかも忘れたけれど、靴好きの友達と落ち合ってみたら、二人の靴がすごい色の組み合わせで、それがこの旅の印象的な記憶になった。

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初日は代官山や中目黒を歩いて、最後は宿泊先の渋谷のプチホテルでごはんを食べた。
内装がちょっとお姫様風の、古いホテルだった。

二日目は、友達がその旅で一番希望していた、私も初めての東京ディズニーシー
忘れもしないその日は、3月末にしては異例の寒波が東京に来た日だった。
完全に春の服装しか持っていなかった私たちは、昼間はまだしも、夕方からはもう寒さのことしか考えられず、とにかく何でもいいから屋内のアトラクションばかり選んで行く羽目になった。
持ってきていた革のショートコート一枚では到底海風に耐えきれず、ひとつ200円ぐらいするミッキー型のめちゃくちゃ小さいカイロを二つ買って、それでも全然寒さが凌げなかったのを覚えている。
あんなに寒い思いをしたのは久しぶりだった。

それでも閉園まで遊んだ、と手帳のメモには書いてあって、今考えるとどれだけ若かったのか。
その日は東京湾の埋め立て地のホテルに泊まることになっていて、海の上を走る電車でホテルに向かったのを覚えている。
あれは何線だったんだろう。
最寄り駅から迷ったせいでけっこう距離のあるそのホテルまで、重い荷物をゴロゴロ引きながら、暗くて広い埋め立て地を歩いた。
辿り着いたホテルは思いの外ピカピカで、部屋も広く設備も抜群、疲れ切っていた私たちのテンションは上がった。
とにかくまずはあたたまろうと、バスタブに熱いお湯を張り、湯船に体を沈めてしばらくしてようやく、一日凍えた体に体温が戻ってきたのだった。
お風呂から上がり、友達がつけたテレビで、吉本芸人が深夜の大喜利番組をやっていたのをぼんやり見ながら、
清潔で設備の良いホテルの部屋がこんなにも大事だなんて知らなかった...と、しみじみ思ったのを覚えている。

翌日の最終日は、浅草観光をして、神谷バーで電氣ブランを飲んでかなりほろ酔いになり、そこで関西に帰る友達と別れたのだった。
私はそこからも少し東京に残り、大学時代の同級生と会ったり、別の友人を訪ねたりして過ごしたのだけれど、案の定風邪を引いて、そこからかなり長いこと治らなかった。
そのときの喉の痛みは、なぜか今もけっこうはっきり思い出せる。

30代の初めの、あれは最高に楽しい時期だった。