新しい靴の裏を炙る

入園式に備えて息子の新しい靴を用意していたら、急にふと「新しい靴をおろすときに、靴の裏を火で炙る」という、小さい頃実家で必ずやっていたおまじない(?)を思い出した。

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実家を離れてからも、時々思い出してはやっていた。
でもあるとき「これってなんでやるんだろう?もしかしてうちだけ?」と初めて疑問を持ち、人に聞いてみたら、そんな習慣聞いたこともない、と言われてびっくりした。

それきり調べもしなかったのだけど、今回気になったのでネットで見てみたら、どうも地域限定で同じ習慣のある人がいる。
その中に、「三重県の松阪にそういう習慣があるとTVでやっていた」という情報を見つけて、あ、と思った。
うちの両親はどちらも大阪の出身だけれど、父方の祖父は確か松阪のあたりがルーツなのだ。

ネットには「午後(や夜)に新しい靴をおろしてはいけない」という言い伝えも合わせて書いてあって、あぁ、そういえばそれも実家で言われていた気がするなぁ...朝になるまで新しい靴をおろすのを待たされた気がする...と思い出した。
懐かしい。

こういう話が好きだ。
何も考えず、当たり前のようにやっていたことやしゃべっていた言葉が、実は意外な土地とつながっていて、そこから自分のルーツや、土地と土地、人と人の結びつきが分かったりする。
今風に言えばNHKの「ファミリーヒストリー」的面白さ。
もしくは、民俗学的な面白さ。

靴を炙るのと同じくらい地域限定的なものとして思い出したのが、「とごる」という言葉だ。
「砂糖や塩、シロップとかが液体に溶け切らず底に溜まっている」状態を言うのだけれど、これが同じ大阪の友達にもまったく通じないことがあって、不思議に思っていた。
でもあるとき、三重寄りの奈良に代々住む友達に聞いてみたら、当たり前のように知っていて、あ、そっちの方面の言葉なんだと気づいた。
「とごる」もやっぱり、父方祖父のルーツと関わりがあるのかもしれない。

それにしても、「とごる」は他の言葉ではなんとも表現しがたい。
「『とごる』が使えなかったら何て言うの?」と友達に聞くと、「沈殿する?溜まるとか?」と言われて、いや~、なんか違うんだよなぁ...!と思った。
これはたぶん、ネイティブ「とごる」ユーザーにしか分からない違和感なんだろうな(笑)

年を取ると、いろんな物事のルーツが本当に興味深い。