シェフからのお届けもの

この間茹でたタケノコが美味しかったので、今度は多めにタケノコを買ってきてまた茹でていたところ、夫からメール。
近所に住む夫の知り合いのAさんが、これから茹でたてタケノコを持ってきてくれるという。
わわわ。突然のタケノコ長者。

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Aさんはもう70半ばのとても上品な老婦人で、うちのすぐ向かいの棟で一人暮らしをしている。
というか、Aさんの家に一度遊びに行かせてもらったのがきっかけで、Aさんと同じ敷地の一室がたまたま空いたときに、うちが引っ越してきたのだ。
そんな風にして引っ越してきたAさんの知り合いが、近所に何人かいるらしい。
確かに、近くにこの人がいたら生活がちょっと楽しくなりそうだな...と思わせる人なのだった。

Aさんはとにかく料理上手な人で、その腕を生かして、週に何度か、決まったおうちにごはんを作りに行く仕事をしているらしい。
彼女のごはんを何度かごちそうになったことがあるけれど、食材ごとの火の通し具合とか、切り方とか、決して塩分が濃くない薄味なのにしっかり味がするところとか、すべてがさりげないのにそれはそれは丁寧なのだった。
高齢だし一人で楽しく暮らしている人だからなかなか言い出せないけれど、本当はAさんに定期的に料理を習いたいといつも思っている。

そのAさんが、タケノコを持ってやってきてくれた。
夫が茹でタケノコと言っていたのでそうだと思っていたら、すぐに食べられるタケノコご飯!
しかもおかずまでついている。
受け取るとほんのり温かく、作りたてを持ってきてくれたことが分かる。
これはもう、そのまま夕食にできるじゃないか。

Aさんはいつものように、玄関先でニコニコ受け渡しだけを済ませると、すぐに帰って行った。
こういう物足りないぐらいさっぱりしたところも、人に好かれる所以なんだろうな。

いただいたごはんを後でお皿に三人分取り分けていたら、Aさんのさらに細かい心遣いに気が付いた。
全部がちゃんと、三人分なのだ。
トマトも、スナップえんどうも、アスパラも、卵焼きも。
そして、大人2人と子ども1人が一食でちょうど食べ切れる量なのだ。

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これは、プロの仕事だ...と改めて感嘆。
味だけでなく、普段から仕事として人のごはんを作っている人だからこその、分量感覚のなせる技だ。
家庭料理しか作ったことのない人だとこうはいかない。
お裾分けでも量はざっくりで、余ったり、均等でなく何かの具が不公平になったりするのが普通だ。

なんだか流行りの、プロのお店のテイクアウトをしたような気分になった。
しかもシェフ直々のデリバリー付きという贅沢。
実際Aさんは、今はコロナの影響で仕事を控えているらしいので、たぶんそれで時間があって、うちにラッキーなおこぼれが来たのだ。

息子も「Aさんのごはん、おいしいねぇ!」と言いながら、けっこうな量のごはんをペロリと完食。
外食もままならない生活の中で、降って湧いたラッキーな、楽しい一食だった。