出産ふりかえり 産後0日(お産まで)

最後の検診が終わった日の夜のこと。

ぐっすり寝ていた丑三つ時に、お腹の違和感で目が覚めた。
陣痛かどうか分からなかったけれど、とりあえず妊娠出産アプリの「陣痛カウンター」に記録。
次にまた来たら時間間隔を確認しようと思っているうちに寝てしまって、次に起きたのは1時間後だった。

二回目はややはっきりとした、生理痛のような痛み。
でも同時に腹痛もあって、とりあえずトイレへ行ってみたものの、何も出ない。
夫を起こそうか迷ったけれど、まだよく分からないので、本当に陣痛だったときに備えて入院グッズに最後の身の回り品を入れよう...と思っていたら、三回目の痛みが来た。

急に15分間隔だ。経産婦は、15分間隔になったら病院に連絡するよう言われている。
三回目もやっぱり普通の腹痛のような感じもあったので、大かな?と思って再びトイレに行くも、これはトイレでいきんだらまずいやつかも!と思い直して、小だけ済ませ慌てて部屋へ戻った。

その足で夫を起こしたら、また次の痛み。
今度はいきなり3分半間隔になっている!
いや、今回はたまたまかもしれないと思いつつ、夫に入院グッズを玄関に運んでもらっていたら、3分半後にまた痛みがやってきた。

これは、病院に連絡しよう!
いや、タクシーを呼ぶのが先か?
いや、やっぱり病院だ。
ちょっと慌てながら病院に連絡、規則的なのでたぶん陣痛だと思う、着くまでに20分ぐらいかかると伝えると、ではとりあえず来てくださいということになった。
その間にも3分半間隔で痛み。

電話を切って、今度は予め登録しておいたタクシーにかけようとするも、夢の中で電話をかけるみたいに、慌てていてプッシュを何度も間違えてしまった。
そうしているうちに、尿漏れのような感覚。
でも小はさっき行ったばかりなので、これは噂の「尿漏れのような破水」かもしれないと夫に告げる。(実際、後で病院に行くと破水だった!)
タクシーに電話がつながって、諸々の確認を済ませたところで、20分ぐらいかかるがいいですかと告げられ、他にどうしようもないので待つことになった。

その間にぐっすり寝ている息子を起こし、前から説明していたように、これからママが病院に行って赤ちゃんを産むこと、しばらくおうちに帰れないことを改めて説明した。
泣くかと思いきや、夜中に起こされた非日常感や、タクシーが家に来るという高揚感からか、息子はむしろ楽しそうだったのでホッとした。

その間にも3分半間隔の痛みは続き、そろそろタクシーが来る頃に、みんなで家を出て建物の入り口に向かった。
このとき、エレベーターに向かう外廊下に今にも飛びそうなセミが横たわっていて、「こわい...」と立ちすくむ息子の手をギュッと握ってササッと走って通りすぎたのだけれど、後日息子は何度も「ママがおなかいたくなってエレベーターのるとき、セミこわかったよねぇ」と言っていた。
きっとそのことは、長く息子の記憶に残るんだろうな。

かくして、最初に起きた丑三つ時から2時間した頃に病院に到着。
夜間救急入り口ではもう歩くのが辛いくらいになっていた。
救急受付の華奢なお兄さんが意外な力を発揮して、ボストンバッグをかついで片手でゴロゴロを引き、臨月の激重妊婦を乗せた車椅子を片手で操作しながら産科フロアまで行ってくれたのを、妙に覚えている。
ちなみに、コロナのため立ち会い出産も面会もできないため、夫も息子も家で待機、一人で病院に行って医療スタッフとだけ臨む出産なのだった。

産科に到着した後は、とにかくバタバタ。
通常待機する陣痛室はすっ飛ばして分娩室、もういつ産まれてもということで、すぐにお産体制に入った。
陣痛と陣痛の合間の2分ぐらいにせーので病院服に着替え、また次の陣痛間隔に、スタッフに買ってきたもらった水を飲み...という感じ。
荷物のどこに何があるか(たとえば水を飲むストロー)の指示も、陣痛の合間に「黒いボストンバッグの中に...あっまた(陣痛)来ました...うぅ...」という感じ。
とにかく呼吸が苦しくて、口を開け続けているので、口も喉もカラッカラだった。

子宮口が全開になり、陣痛の波に合わせていきむこと10回ほどだったと思う。
いきみ始めて30分もしない頃、「次(の陣痛)で出ますからね~!...はい!もう力抜いていいですよ!」という声と共に、産声が上がり、ヌルッとした赤ちゃんが高々と持ち上げられるのを見た。

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あぁ、会えた...と思ったら、可愛くてホッとして涙が出た。
3500g近い元気な男の子だった。