住宅街の喫茶店

まとめ買いのスーパーに、スニーカー洗濯のコインランドリーにと、限られた時間で回った休日。
ひと通り用事が終わり、帰るまでにひと息つきたくなってどこのカフェにしようかなと脳内検索していたら、近くに時々気になる喫茶店があったのをふと思い出した。
Google検索してみたら、まもなくお店自体が閉店になることが判明。
これは行っておかなくてはと、一度通りすぎたそこへもう一度引き返した。

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レトロというにはあまりにも「昔ながら」なその喫茶店は、平日のランチ時にいつもそこそこ客が入っているのが気になっていた。
今回はティータイム利用だったけれど、地元の人に愛される店なのはすぐ分かった。
出てきたコーヒーやケーキの味もさることながら、オーナーであろう老夫婦の人柄が、とても優しくて穏やかなのだ。
注文を取りに来た奥さん、レジ対応をしたご主人、それぞれほんの1分程度の関わりだったけれど、そのことはよく分かった。

店内には洋楽のオールディーズが流れ(後で調べたら「花のサンフランシスコ」という有名な曲だった)、コーヒー豆やおしぼりの漂白剤の匂いが混じった、古い喫茶店の匂いがした。

閉店するのは、コロナの影響もあるんだろう。
年齢的にもいつまで続けようか、たぶん時々考えながらの営業だった中で、コロナ禍に背中を押されて閉店を決めたんじゃないだろうか。
そんな歴史をうかがわせる、年季の入った喫茶店だった。


昔々、私が生まれた頃から小学校低学年頃まで、祖母の家は喫茶店だった。
正確には叔母がやっていたのを祖母が手伝っていたのだけれど、「おばあちゃんちに行く」と言えば、その喫茶店に行くというイメージだった。
実際、父も母も店の屋号で「○○行ってくるわ」と言っていた。
叔母の人柄がたぶん喫茶店には向いていなくて、あまり感じ良いとは言えない部分も多々あっただろうけれど、当時流行っていたインベーダーゲームが設置されていたのと、祖母の作る飲み物食べ物の味が確かだったせいか、お店はそこそこ人が入っていたように思う。
後で知ったところでは、口コミで評判になるような看板メニューのドリンクもあったみたいだ。

叔母が「なんとなく飽きて」やめてしまったその店は、もし今も続いていれば、たぶんそこそこ人気のレトロ喫茶として、わざわざ来る人もいるお店になっていただろうと思う。
そういう喫茶店が、全国にたくさんあった時代だった。

なんにしろ、「長く続けること」は、簡単なようで一番難しい。