BROTHERS

次男の歯が生えてきた。
そのことに最初に気づいたのは、なんと長男だった。

「ママー!ふくちゃんのおくちのなかに、しろいやつがでてきてる!」
なになに、何の話だ?
急いで長男について行くと、「ほら、ここ!は、みたいなやつ!」と次男の口の中を指差す。
あぁ、歯か!
見ると、本当に下の前歯が二本、同時に頭を覗かせていた。
昨日まではなかったはず。
まさにその日、生えてきたのだ。

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折しも、毎日見ている近所の桜がほころんだ日だった。

最近長男は気づくとよく次男を観察していて、「ねぇママ、ふくちゃんかわいいね」と言ってくる。
幼稚園の先生からも「まるちゃん、うちの赤ちゃん可愛いって言ってました」と報告されたことがある。
生後半年が経ち、次男の表情も動きもだんだん豊かになってきて、長男のちょっかいに喜んで笑ったりするので、長男はそれが嬉しいのだろう。
朝も、起きてしばらく部屋から出てこないので見に行くと、ベビーベッドの横に立って寝ている次男をじっと見ていたりする。
「何してんの?」と聞くと「ふくちゃんみてるの。かわいいから」と言うので、両方可愛くて思わず笑ってしまう。

産後、退院して家での生活が始まってすぐは、二人がうまく共存するにはどうしたらいいか、ヒヤヒヤしながら試行錯誤だった。
悪気はなくても、3歳の激しい動きや力の強さは新生児の命を容易に脅かす。
けれど、不用意に「あっダメ!」とか言ってしまうと、たたでさえ赤子のために我慢を強いられている3歳はひどく傷ついて、ますます我慢をするようになってしまう。
それが続くと、たまった鬱憤は間違いなく一番弱い者へ向く。
そうならないため、新生児に対する力加減をマスターしてもらうまでは、とにかく優しく、タイミングを見計らって言い聞かせた。
危険なことをした直後に言うと「よかれと思ってやったのにダメ出しされた」と受け取られてしまうので、長男が穏やかな気持ちのときに「こんな風にさわってあげてね」「こういう風になると危ないから気をつけようね」と言って聞かせ、優しくできたときにはすかさず「わぁ、上手にできたねぇ!」、言われたことに気をつけているなと分かったときには必ず「いまちゃんと気をつけてたね!えらいね!」と褒めて、ヨイショしまくっているうちに、長男の態度もだんだん落ち着いてきて、安心して見ていられるようになった。

次男が視点を定められるようになってからは、次男が少しでも長男を見ると「あっ、まるちゃんのこと見てるよ!まるちゃんのこと好きなんじゃない?」とおだてる作戦。
名付けて「小・中学生の恋」作戦。
「あいつお前のこと見てるぜ。お前のこと好きなんじゃないの?」と言われているうちにその子のことが気になってきて、なぜか好きになってしまう...というアレだ(笑)
これはかなり成功で、「あっ、ほらまたふくちゃんがまるちゃん見て笑ったよ!」とか言い続けているうちに、長男は自ら「ふくちゃんこっちみてる!まるちゃんのことすきなんだね」とか言い出して、「よしよし、おおきくなったらいっしょにあそぼうな!」と頭をなでなでするようにもなった。
次男は次男で、赤ちゃんはやっぱり赤ちゃんや子どもに興味があるので、長男が近づくと実際嬉しそうにする。
そんな相乗効果で、今ではすっかり二人は仲良しになった。

高齢出産だからこそ、きょうだいを作ってあげたい、親亡きあと互いに助け合って生きていってほしい、と思っていた。
でも、せっかくきょうだいができても、仲の悪いきょうだいだと生きていく上で厄介だ。
今のところ、すべり出しは好調でホッとしている。

どうかこの先も、二人が仲の良い兄弟でい続けてくれますように。