十年前も同じカレーを食べていた

ずいぶん前、奈良に住む友達に、けっこう辺鄙な場所のカレー屋さんに連れて行ってもらったことがある。
「とにかく辛い」と聞いていたそのカレーは、確かに私がそれまで食べたどのカレーよりも辛く、ヒィヒィなりながら食べた。
辛くて辛くて水が欲しいのだけれど、そのお店には「水を飲んだら水地獄」とおどろおどろしく書かれた注意書きがあって、要は、辛いのは水では和らげられない、白米やヨーグルトを混ぜてね、みたいなことだった。
そんなことは知らずに普通のペースで白米を食べていたものだから、混ぜるものがなくなってきて、最後は大汗。
さらに食べた数時間後、それまであまり経験したことのない胃痛というか、胃痙攣?みたいな状態になって、慌てたのを覚えている。
初めて食べた激辛カレーに、胃がびっくりしたのかもしれない。

それでもなぜか不思議とまた食べたくなって、数年後、奈良のメジャーな場所に移転したその店を再訪した。
そのときはちゃんと「水地獄」を覚えていたので、白米のペース配分を意識しながら、前回よりは辛さにやられることなく食べ終えたのだった。

そのお店が、今年になってなんと東京に移転した。
たまたま流れてきたSNSで知ったのだけれど、どうやら全国的(?)にかなり有名なお店だったらしい。
ちょうど用事で行く予定の駅近くだったので、これはちょっと行っておかねばと、激辛を覚悟して出向いたのだった。

行列と聞いていたので開店と同時に行ってみたら、その日はたまたまなのかまだ空いていて、好きな席に座れた。

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ランチは決まったメニューにオプションをつけるスタイル。
この日はチキンカレーだった。
マイルドな豆カレーをつけると激辛を和らげられたことを思い出して、それもつけることにした。

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今回は三回目なので、白米のペース配分もバッチリ。
豆カレーも適度に織り混ぜながら食べていたら、「あれ?この程度の辛さだったっけ?」と思っているうちに食べ終わってしまった。
辛さ順応力、恐るべし。

初めて行ったのは、調べてみたらちょうどお店のオープンした年、十年ちょっと前だった。
友達の家に夜遅く泊まって、次の日から一緒に旅行に出かけることになっていた、その夜のごはんだった。
もう一人一緒にカレー屋に行くはずだった友達が、仕事で遅くなってごはん後に合流したこととか、駐車場がお店からちょっとだけ離れていて淋しい夜道を歩いたこととか、お店に貼ってあった店主が取材された新聞記事のこととか、そういうどうでもいいことも、なぜか覚えている。

十年後、あの店に東京でまた行くことになろうとは、まさか想像もしていなかった。