湯上がりっぽい女(ひと)

今期のドラマ、なんとなく一番気に入って見ているのが「生きるとか死ぬとか父親とか」。
同じテレ東の好きだったドラマ「きのうなに食べた?」とどこか通じるほのぼの・ほろ苦感があって、いつのまにか毎週一番楽しみにして見るようになった。

吉田羊のうまさはもちろん、父親役の國村隼の、「いろんな人を傷つけてもきたけど人に愛される愛嬌を持った男性」の老後ぶりがリアルで、説得力がある。
原作者ジェーン・スーさんの他のエッセイで読んだときにはうまくつかめなかった父親の人物像が、國村隼の演技を見て初めて「あぁ~、そういう人か!」と掴めた感じがする。

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このドラマを見ていてもう一人気になるのが、ラジオ番組のアシスタント役(?)の田中みな実
なんとなく男性に人気のある人、ということしか知らず、顔もよく知らなかったけど、このドラマで初めて認識。
同時に、昔少しだけ関わったことのある、ある女の子を思い出した。

女子高に通っていた高校生の頃、友達とやっていた短期バイトの仲間と、それぞれの友達を集めて何人かで遊びに行くことになった。
女子高だったので「可愛い子連れてきてよ」と男の子に言われ、違うクラスにいた友達の友達(Aさんとする。目鼻立ちのはっきりした可愛い子だった)を誘ったら、Aさんが「違うクラスの子だけだと心細いから一番仲がいい友達も連れて行っていい?」と言うので、Aさんの友達(Bさんとする)も行くことになった。
友達の友達の友達であるBさんとはもちろんしゃべったこともなく、顔もなんだか薄~くて覚えにくい子だった。
声が小さくてしゃべるとすぐ顔が赤くなるような、でも黙っているときはにこにこしている、線の細い優しそうな子だけれど、とにかく地味、というのが私たちが共通に抱いた印象だった。

それが。
バイト仲間との遊びにBさんを連れて行ったら、その場にいた男子全員が色めき立ったのだ。
ある男子は、私たちに「ちょっと!Bさんめちゃくちゃ可愛いやん!」と耳打ちまでしてきた。
私も友達も「え、Bさん?Aさんじゃなくて?」と思わず聞き返したら、「いや、Aさんもまぁ可愛いけど、それよりBさん!めちゃくちゃ可愛いやん!全然普通じゃないやん!」と言うので、私たちは本当に驚いた。
「男子が思う可愛いと女子が思う可愛いは違う」というのはよく聞くけれど、それがこれ?Bさんのどこがそんなに?と二人して不思議がったものだ。

後日、大人気のBさんを別の集まりに呼ぶ会が催されたようで、私と友達はそこには行かなかったのでAさんから聞いただけなのだけれど、そこでもやはりBさんは男子に大人気だったそうだ。

「生きるとか死ぬとか...」の田中みな実を見ていたら、そのBさんのことを久しぶりに思い出した。
もう顔も名前も覚えていない、ただその「女子からはあんなに地味に見えたのにその場にいた男子全員が色めき立った」ということでだけ記憶されている、Bさんの雰囲気を。
あぁ、そういえばあの大人気だったBさんは、こんな感じだったかも...と。

こんな感じというのは、わたしの中では「湯上がりっぽい」女の人。
ただ単にすっぴん、とかではなくて、なんか湯上がりの湯気が立ってそうな、いい匂いと共に湯気とか潤いが、首元に漂っている感じなのだ。

Bさんが果たして本当にそんな雰囲気だったのかどうか、とにかく印象が薄くて覚えていないのだけれど、大人になった今の自分から見てBさんがどうだったのか、確かめたくて仕方ない。
そして、大人になってから出会った男性たちに、Bさんの魅力を言葉にして説明してほしい。
それが「湯上がりっぽい」で合っているのかどうかも。

Bさんがあの後どんな20代になって、どんな恋愛をして、今どんな40代の女性になっているのか、かなり見てみたい気がする。