家族の風景

幼稚園バス停の行き帰りに通る道に、大きな枇杷の木がある。

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すごくたくさん実がなる木で、これが枇杷の木であることに去年気づいて以来、とりたいなぁと思い続けているのだけれど、とるには枝が高すぎる。
毎日長男と見上げては「とりたいねぇ。とれないねぇ...」と言い合っては行き過ぎていたのだった。

そんなある日、ひと枝だけ、がんばれば届きそうな枝があるのを発見。
がんばれば、と言っても丸腰では無理で、何か道具が必要。
自転車のサドルの上に立つことができれば届く、ぐらいの高さなのだけれど、どうすればとれるか、毎日思案して、ひとまず夫が休みの日に一緒にトライしてみることにした。

「そんなにとりたいの?」と苦笑する夫を連れて、家族総出で(←子ども二人を置いて行けないので)枇杷の木のもとへ。
自転車を持ってきてみたものの、立ち上がるには不安定でやっぱりダメ。
助走をつけて跳んでみたものの、鈍くさすぎる姿に夫を爆笑させただけで終わる。
まぁ、「ダダダダ!ストップ、ぴょん。」って感じで跳ぶから、助走の意味はない(笑)

棒があればなぁ...と呟いたら、長男が「はしっこがまがってて、ながいぼうがあったらいいのにねぇ」。
枝を引っ掛けるための形(かぎ棒)を、ちゃんと理解してるんだ!と思わず笑ってしまった。

やっぱりダメかぁ...これ以上熟すと落ちるか鳥が食べるかだよな...と思っていたら、そこへ運良く、お掃除の人が通りかかった。
掃除用具をいっぱい積んだカートのようなものを持っていて、長いホウキや熊手がある!

サササッと走り寄り「すみません、その熊手、ちょっと貸してもらえませんか?」とお願いしてみると、枇杷の木を見て状況を理解してくれたようで、快く貸してくれた。
「やったー!」と喜ぶ私と長男。
さっそく枝を引き寄せ、苦笑している夫に「ほら、早く!」と声をかけ、実をもいでもらった。
本当は一人一個ずつ欲しかったけれど、欲張りと思われても何なので、二つだけ。
「まるちゃん、とれたよー!」と、あたかも子どもがやりたがるのにつき合ってあげている親、みたいな顔をして、お礼を言って熊手を返し、家に戻ったのだった。

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野生の枇杷なのでそれほど期待はしていなかったのだけれど、冷やして食べてみたら、これが思いの外美味!
果汁がしたたるほどみずみずしくて、長男も「おいしいねぇ!」とまるまる一個ペロッと食べてしまった。
夫もひとくち食べながら、私の鈍くさい姿を思い出してまた笑っていたけれど、そういう姿こそが思い出になるんだからな~。
いつか夫が死の床に臥したとき、初夏の夕陽に照らされながら必死に跳んでた私を思い出して、泣いてもしらないからな~。

長男にとっては初めて食べた枇杷
彼も、きっとこの日のことを覚えているだろう。
鈍くさい母の姿とともに(笑)