運動会と定食屋

週末は運動会だった。

プレ、年少とここ二年は必ず台風にぶつかっていたけれど、今年は曇り空ながらも予定通りに開催できて、初めて夫も一緒に来られた運動会だった。
一年前、異例の「学年別・いつもより競技縮小」となった運動会は、続くコロナ禍で今年も同じ形での開催となった。
可愛い年少さんの競技を見られないことや、家族でお弁当を食べられないのは残念だけれど、短時間に凝縮されているから見るのは楽ではある。

開会前、園児席に集まってきた子どもたちはいつもと違う園の雰囲気にはしゃぎ気味。
開会が近づき、どうやって始めるのかなと先生を見ていると、やっぱり「集団のまとめ方が上手い先生」というのがいるんだな、と思った。
てんでばらばらな子どもたちの注意をひとつにまとめるには、一発で効果のある声かけをするというより、最初にまず注意を向けやすい一部の子たちの注意を引くようなのだ。
ワイワイしている子たちに向かって先生はまず「運動会楽しみなひと~?」と呼びかける。
ここで、先生の話を普段からよく聞くタイプの子たちがまず「は~い!」と手を挙げる。
次に「楽しみだけどちょっとドキドキしてるひと~?」と呼びかける。
すると、さっき手を挙げた子の周りにいた子たちが、さっきは手を挙げそびれたので「は~い!」と手を挙げる。
この頃になると、一番注意散漫な子たちがだんだん「なんだなんだ?先生が何か言ってるぞ?」と先生の方に注意を向け始め、自分も「○○なひと~?」のどこかで手を挙げなければ!と話を聞き始めるのだ。

な~るほど~。
そういえば昔、保育関係のプロに聞いたことがある。
全然お昼寝をしない子どもを寝かせるには、一番うるさい子に寝なさいと声をかけるのではなくて、まず「一番眠そうな子」をしっかり寝かしつけ、その周りの子たちが釣られてちょっと静かになって眠くなるのを待ち、だんだん部屋が「静かな空気」に変わるよう待つのだ、と。
そうすると、一番騒いでいた子がどこかの時点で「あれ?なんか静かになってる?騒いでるの自分だけ?」となって、トーンダウンしていくのだそう。

そんな風にクラスがまとまったところで、開会式が始まった。
園長先生のお話の後、子どもたちが「体操体形」に広がって、準備体操が始まった。
広がったくせにいつのまにか団子になってしまう子どもたち(笑)

去年はほとんど「競争」にならなかったかけっこは、年中となった今年はだんだん差が出てきていた。
息子はと言えば、予想通り四人中安定の四位。
順位はまぁいいとして、その走り方のどんくささに、夫婦揃って唖然とした(笑)
まぁ、人生で一度も速かった頃のない私が言えたことではないんだけど。
夫は「帰ったら特訓だ!」と言っていたけど、走る速さって先天的に決まってるんじゃないの...と早々に諦めている、万年どんくさ母であった。

一時間ちょっとの運動会が終わると、ちょうどお昼時。
せっかくだからと予約しておいた、近くの定食屋さんへ。
古い民家を改造したお店は、王道な感じの定食屋さんで、どれもとっても美味しかった。

f:id:coffeesofa:20211010101748j:plain

ちょうど入ったときの隣の席に、長男よりひとつ小さいくらいの男の子を連れた、家族連れの先客がいた。
ちょっと会釈しながら隣のテーブルにつこうとして、目が合った向こうのお父さんの顔に見覚えがあるのに気がついた。
あれ?誰だったっけ?
幼稚園の近くだし、誰かのお父さんだったっけ?
でもそこの子どもは幼稚園の運動服を着ていないし、お母さんには見覚えないし...まぁもし知ってたら向こうから声かけてくれるか、と思いながらとりあえず席に着いた。

注文を済ませ、時々隣のお父さんの顔を盗み見ているうちに、あっ、と気がついた。
これ、知り合いじゃなくて俳優さんだ!
名前は全く知らないけど、すごく印象的な上手な脇役の人で、えーと、えーと、何のドラマに出てたんだっけ...。

結局思い出せないまま彼らは帰っていき、その後すぐ夫に言ったけれど芸能人に疎い夫が知っているはずもなく、「脇役 名優 夫役」「脇役 40代」とかで検索しているうち、自力でやっと思い出した。
少し前に見ていたドラマの、スナックに通う不器用な独身男性役(のち結婚して夫役になった)人だった!

名前が分かっても全然聞き覚えはなかったけれど(元々名前を知らなかったので)、やっぱりけっこう評価の高いバイプレイヤーの人だった。
定食屋さんとは知り合いみたいだったから、近くに住んでいるのかもしれない。
名前も知らないし出てたドラマもなかなか思い出せなかったから声のかけようもなかったけれど(もちろんプライベートなのでそれでよかった)、後になって「あのドラマの役、すごく印象に残ってます!」とエールを送りたい、行きずりの主婦であった。