curry summer

月に一度くらい朝通る道に、小さなカレー屋の看板を見つけたのはもう半年ほど前のこと。
メニューも何も出ていない、古びた板にいい感じの字体で店名だけが書かれている。
うまく行けば帰り道、お昼時にも通るのだけれど、違うルートで帰ることが続いて、ようやく今月、ちょうど12時過ぎにそのお店の前を通る日がやってきた。

表の看板に小さなランプが灯っていることを確認し、建物の外階段を上がって二階へ。
階段を上りきると、一階から想像がつかなかった少し開けた空間があって、その周りを囲むようにいくつかお店がある。
その一軒が目当てのカレー屋さんだった。

真夏の正午の屋外から店内に入ると、目が慣れるまで一瞬時間がかかる。
暗めの店内には、一番いい奥の窓際席に先客が一人だけいたので、私は二番目にいいかなと思った、入り口近くの二人がけ席に座ることにした。

個人のカレー屋さんってお店の人にクセがあることが多いイメージがあって、初めてのお店はいつもちょっと緊張するのだけれど、年配の店主は特にクセのない接客だったのでホッとした。
メニューはどのカレーもおいしそうで、迷った末、基本のチキンカレーにすることに。
小さなランチビールを付けることができて、銘柄が私の好きなハートランドだったのと、その日はひと仕事終えてもう後の予定がなかったこともあって、ランチビールも追加。

夏のお昼のビールって本当においしい。
付け合わせのサラダの塩が、間違って入れたのかと思うくらい入っていたのでちょっとびっくりしたけれど、汗をかいた日だったので意外にちょうど良いといえば良い。
まもなくカレーも運ばれてきた。

そういえばこのところ家でもカレーを作ることが多い。
この間みんなで森へ行った時に、久しぶりに食べたのがバーモントカレーだった。
そのときの味が妙に懐かしくて、それ以来二回もバーモントカレーを作っているのだ。

幼稚園の頃、いとこの家で子ども用に用意されていたごはんは必ずカレーで、その銘柄がバーモントカレーだった。
子どもにウケる味なのか、当時はいとこの家のカレーをめちゃくちゃおいしいと思っていた。
でも、実家はなぜかバーモントカレー嫌いで、絶対に買ってくれなかったのだ。

だからこの間食べたバーモントカレーはたぶん何十年かぶりの味で、大人になった今でもやっぱりおいしかった。
それで、そうだ、今なら自分で好きな銘柄のカレーが買えるんだった!と思い出して、初めて自分でバーモントカレーを買ったのだ。
息子も「このカレーおいしい!いつものカレーもおいしいけど、これおいしい」と気に入っていたので、やっぱり子どもウケする味なのかもしれない。

小学校の林間学校で作ったカレーも、たぶんバーモントカレーの味だった。
林間学校の前にも、確か一度練習としてカレーを作ったような記憶がある。
理科で育てたジャガイモを食べる機会と兼ねていたような。
夏休みの登校日は「カレーの会」と呼ばれていて、自由登校だったけれど、午前中に反戦教育の映画を見て、お昼はPTAが作ったカレーを食べて、午後は確かプールに入って、それで一日が終わった。
8月の終戦記念日近くの日だったから、カレーの会があると、あぁ、夏休みももう終盤に差しかかるなという感覚になった。

カレーは夏の思い出。