可愛いくておいしかった日

産後1ヶ月。
臨月から2ヶ月間、息子をいろんなところに預けたり人に来てもらったりと、落ち着かない生活を強いてきた。
ずっと無理をさせてきた息子への罪ほろぼしとごほうびを兼ねて、夫が休みの日、少しだけ私と息子だけでおでかけをすることにした。

前の日にお風呂で「明日はママとデートだよ」と教えてあげた。
「デートってなあに?」「二人だけでおでかけすることだよ」「やったー!デート、いく!まるちゃん、カフェにいきたい!」「いいねぇ~」

そんなわけで、ランチも含めカフェを二軒はしごすることに。
お昼ごはんに何が食べたいか聞くと「エビフライがたべたい」というので、おいしい洋食屋の前で「ここにする?」と聞いてみると、「いや。カフェがいい」。
店構えがカフェじゃないから、三歳なりに、ここは違うと思ったらしい。
小さいときからのカフェ教育が効果を見せてきた(笑)
「母はカフェが好きな人だった」 - 珈琲とsofaのあるところ

エビフライが出てくるカフェはなかなかないので、適当なところで折り合いをつけ、おやつのカフェは息子の希望通りのスタバへ。
ネットでコメダとスタバのおやつメニューを見せ、どちらがいいか聞いてみたら、迷いなくスタバのロゴを指して「まるちゃん、ここがいい!」と言うのだった。

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家の中で、新生児と並んで見る三歳児はもう立派な大人で、いろいろなことを要求してしまいそうになる。
でも、街中で私と二人手をつないで歩く息子は、まだまだとても小さかった。
時々まだ赤ちゃんぽさも残る可愛さで、大事そうにアイスココアを飲むおくちを見ていたら、ぎゅうぎゅう抱きしめてあげたくなった。
二人デート、してよかった。

次の授乳時間が迫り、だんだんおっぱいも張ってきたので、そろそろバスに乗って帰ることに。
息子はもちろん「いや!」と言ったけれど、この日ご近所の料理上手マダムが差し入れに来てくれることにもなっていたので、「会いたいでしょ?」と言ったら、すんなりバスに乗ってくれた。

そして、夜。
これまでも何度かごちそうになったことのある料理上手のマダムが、とびきりおいしいごはんを持ってきてくれた。

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どれもこれもおいしくて、翌日に残しておこうと思っていたのに、あっという間に三人でほとんど食べてしまった。
箸が止まらない感じ。
息子もパクパクおかわりしていて、やっぱりおいしいものは分かるんだなぁと思った。

おでかけして、可愛い息子を堪能して、おいしい料理にも恵まれた、秋の一日。

出産ふりかえり 産後5日(退院)

退院の日。
外は朝から快晴で、気温を確かめるために窓を細く開けたら、開けた途端ムワッとした熱気が入ってくるほどの猛暑だった。

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最後の朝ごはん。
入院したその日の朝ごはんから病院で食べたから、五泊六日の入院で、おやつも入れて21食を食べたことになった。

赤ちゃんの黄疸値の最終確認がこの日の昼頃出るので、それを待っての退院。
個室なので、荷造りした後もゆっくり待機できるのがありがたかった。
もう使うことのないだろう産科病棟の、新しい個室を名残惜しんで、あちこちの写真を撮った。

赤ちゃんの検査結果も問題ないことが分かり、お昼過ぎに退院手続き書類ができてきて、14時頃に夫と息子が病院に到着。
約一週間ぶりに息子に会うときは、いきなり赤ちゃん連れでなくまずは純粋にママとだけ対面させてあげたかったので、赤ちゃんをナースステーションに預けたまま、荷物だけ持って私一人で息子たちの待つ外来棟へ向かった。
コロナのため、退院時のお迎えですら、夫も息子も病棟には上がって来られないのだ。

大きなゴロゴロを引いて待ち合わせのベンチに向かうと、息子と夫の後ろ姿が見えた。
しばし立ち止まって眺めていると、息子がこちらに気づく。
暑い中一生懸命外を歩いてきたらしく、汗で髪の毛が張り付いて、赤い顔をしている。
その顔がゆっくり笑顔になって、「ママー!」という嬉しそうな声とともに、タタタとこちらへ駆けてきた。

荷物を置いて、息子に向かって両手を広げる私。
ギュッとハグして抱き上げようとしたら、三歳児の体の厚みと重さに、思わず「デカっ!でっか!!」と声が出た。
たった一週間足らずでも、新生児サイズに体が慣れていたのだ。 

それでもなんとか抱き上げて、汗ばんだ体をぎゅうぎゅうしていたら、思わず目に涙が滲んできた。
あぁ、こんなにも会いたかったんだ、私。

号泣するかと思った三歳児は満面の笑顔で、泣いたのはむしろ大人の私の方だった。

出産ふりかえり 産後4日(お祝い膳)

産後4日目は退院前日。
この日は入院中最も忙しい日で、退院前の母体診察やら退院後の生活指導、赤子の健康状態チェックやら何やらがあり、夕食にはお祝い膳が出される。
赤子の黄疸治療は無事に進んで、母子同時に退院できそうな見通しとなった。

今回の出産は、コロナで家族の面会もできない、完全に赤ちゃんとだけの入院。
面会ができた前回は、洗濯物の回収がてら夫や義母が来てくれていたのだけれど、今回はできるだけたくさん着替えを持って行って、洗濯も病棟のコイン洗濯機でやっていた。
さすがに退院時の服までは手が回らなかったので、退院前日ではあったけれど夫に持って来てもらうことにして、その時間合わせもあってますます忙しかった。
何しろ家族が病棟まで来ることが禁じられているので、荷物の受け渡しすらスタッフを介さなければならない。
そのために、だいたいの時間をスタッフに言っておかなければならないのだった。
結局スタッフに掛け合って、私が外来の売店に出向く形で、夫に会って直接荷物の受け渡しができたのだけれど。

夫に会って戻ったらもう夕方で、まもなくお祝い膳の時間。
前回の出産のときは、同じ日に退院する他のお母さんたちとラウンジに集まって会食という形だったけれど(そこで早くもママ友作りをする人もいるらしい)、今回はコロナで会食は中止とのこと。
私は今回個室だったから、新しくて広い部屋で赤ちゃんと二人でお祝い膳をゆっくり楽しめたけれど、大部屋だったらせっかくのごちそうが楽しさ半減になるところだった。

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通常の食事がトレイ一枚で済むところ、お祝い膳はトレイ三枚の、フレンチフルコース形式(一度に出てくるけど)。
写っていない一枚には、ポット入りの紅茶が載せられている。

幸い、食事の間赤ちゃんはずっと静かにしてくれていて、赤ちゃんを眺めながら、一人静かに最後の夜を味わった。
淡いピンクを基調にした可愛い個室で、暖かい色の照明のもと、ゆっくり食べたお祝い膳は忘れられない。

窓からはこの日も夜景がきれいに見えた。
明日はとうとう、その夜景の中に戻っていくのだ。

出産ふりかえり 産後2日・3日(搾乳の日々)

産後2日目の昼ごはんは、入院中で(お祝い膳を除いて)一番美味しかった韓国ごはん。

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その日の夕方、赤ちゃんが黄疸で入院治療することになった。
直接授乳できないので、母乳の分泌を維持するため、3時間ごとに搾乳して入院病棟に届けなければならない。
一人目の時より母乳が出ているのが嬉しくて、眠い目をこすりながら搾乳し、小さな哺乳瓶に入れて牛乳配達のようにせっせと届けた。

翌日、3日目。
それまでの相部屋から、希望していた個室にやっと移れることになった。
個室はたまたま改装したてで、料金が上がる直前のナイスなタイミング。

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個室から見えた夜景。

昼間の眺めももちろん素晴らしくて、向かいの病棟しか見えない大部屋とは雲泥の差だった。
個室で過ごせたのは入院生活の半分弱だったけれど、前回はただただ辛かった入院生活が今回はいい記憶になったのは、個室でゆっくり過ごせたことも大きかったと思う。

退院二週間後、成長具合を見るために二週間健診に行ったとき、外からこの部屋を見上げる場所を通る機会があった。

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二週間前の自分はあの中にいたんだと思うと、不思議な気持ちがした。

100年ぶりに外に出た

やっと、産後1ヶ月。
夫の「ちょっと一人で出てきたら」という計らいもあり、試しに一人ランチに行ってみることにした。

試しに、というのは、一人で外出 vs 授乳の時間や昼間の睡眠時間確保と、どちらが楽になるのか分からないから。
2,3時間おきに授乳しないとおっぱいが張ってくるし、夜中に何度も起きる分、赤子と一緒に昼間もちょこちょこ寝なければ睡眠時間を確保できない。
要するに、肉体的な休息と精神的な休息、どちらが今効果的なのか、試してみようということで出かけたのだった。

行き先は近すぎず遠すぎず、適度に近所から離れておでかけ気分を味わえる場所、ということで前に行ったことのあるカフェにした。

バスを待っていたら、不思議な気持ちに襲われてきた。
なんだか、100年ぶりに外に出たような。
一人目の産後初めて一人で出かけたときも、同じような気持ちに襲われたことを思い出した。
世界が違って見えるというか。
それはなぜなんだろうと考えたら、たぶん、身体の変化が大きいのだ。
妊娠が分かって9ヶ月近く、自分の身体が自分一人で自由にならない生活を送ってきた。
初期はつわり、安定期に入る頃にはお腹も出てきて服装にも制約が出るし、走ったり重いものを持ったりするのはやっぱりなんとなく避けるようになる。
自分の身体に対して無意識でいられないというか、常に胎児を気にかけながら動いている状態が続くのだ。
後期になったら日に日に身体は動かしづらくなり、段差やすべりやすい場所がないか常に気をつけながら、ゆっくりゆっくり歩いていた。

その制約がすべてなくなった状態で外に出たのが、産後初の一人外出なのだ。

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到着したカフェは思いの外混んでいて、テラス席なら入れたけれど、店内は30分待ち。
迷ったけど、店内の方がメニューも多いので店内にすることにした。

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魯肉飯のランチ。ちょっと味が濃かった。
せっかく待ったので、店内でしか食べられないプリンアラモードもオーダー。

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外でしか食べられないような凝った食べ物は久しぶりで、盛り付けもしっかり愛でてから、ひとくちひとくち味わった。

帰りのバスと徒歩で町を見ながら、いつの間にかお店がなくなったり変わったりしていることに気づいた。
春から今までの数ヶ月の間に、こんなに様変わりした町の様子を初めて見た。
コロナで、もたなかったのだ。きっと。

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カフェの待ち時間があったのと、出かけたらついでにあれやこれやの用事を思い出していろいろ立ち寄ったのとで、バスを乗り継いで帰る頃には授乳間隔をとっくに過ぎていた。
赤子は寝ていたので、帰ってすぐに搾乳。

長時間になってしまったので肉体的には少し疲れてしまったけど、外に出たことは精神的なリフレッシュになった。
動けるようになってきた頃にちょうど涼しくなってきたのも良かった。
まだあとしばらくは、ステイホーム気味な産後が続くけれど。

9月の空、朝のルーティーン

真夏の盛りの出産から4週間が経った。
あんなにあんなに暑かった日々もいつのまにか牙を抜かれて、雲が秋の形になった。

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寝たのか寝ていないのか分からない3時間毎授乳の夜を経て、毎朝6時に起きる。
3時間毎とはよく言うけれど、ミルクや搾乳を足すときはゲップ待ちやら哺乳瓶の洗浄やら再び寝付くまでの時間で1時間はかかるので、インターバルは長くて2時間だ。
起きたら、お弁当の日はお弁当を作り、給食の日は20分だけ長く横になってから、息子の朝ごはんを作る。
入れ替わりに夫は出ていく。
なかなか起きない息子を、機嫌を損ねないようあの手この手で優しく起こし、時には声を荒げて急かしながら、いつ泣き出すか分からない赤子の様子を見つつ、次の授乳に備えて哺乳瓶や搾乳機を消毒液から出して拭いたりする。
息子が機嫌よく起きて少し余裕があるときは、朝食を食べる息子の横で赤子に授乳をする。
合間に細かな作業(息子の検温や名札付け、幼稚園の持ち物チェックなど)もある。
8時前になったら息子を急かし、お着替え、歯磨き、トイレをさせながら、自分も着替えて最低限の身支度をし(今はマスクがあるので眉毛しか描かない。これは本当に助かる)、抱っこひもを装着し、赤子を新生児用のインサート(抱っこひもの中にさらに入れるやつ)にセットする。
抱っこひもの背中のベルトを息子がカチッと止めてくれたら、さぁ出発。
園バスのバス停まで、5分の道のりを手をつないで歩く。

8時過ぎに息子を送り出したら、ようやく少しだけひと息。
5分の帰り道で見上げる空が、このところで唯一季節を感じる一瞬なのだった。

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出産ふりかえり 産後1日(筋肉痛とシャワー)

出産翌日の朝になって、ようやくシャワーを浴びることができた。
明け方の出産だったから、出産前日の夜以来30時間以上ぶりのシャワー。
まだまだ猛暑の頃で、病院到着までにすでに汗をかいていたうえ、出産でものすごい量の汗をかいたから、出産直後すでに自分でも匂うな...というぐらいだった。
でもそこから丸一日はシャワーを浴びられない。
予約制のシャワー室を翌朝イチに取り、髪や体を丁寧に洗い流して新しい下着と部屋着に着替えたら、ようやく人間になった気がした。
出産という野性的な行為の後だったから、それまではなんだか自分が「動物」っぽかったのだ。

共用のシャワー室を使っていたら、久しぶりに昔のことを思い出した。
30代前半の頃、数百キロの距離の出張を頻繁にしていたのだけれど、節約のために宿はゲストハウスを使っていた。
病院のシャワー室を使っていたら、いろんなゲストハウスのシャワー室を思い出したのだ。
外国人が多かったから、どこのゲストハウスにも外国人の香水の匂いが漂っていた。
あの宿たちも、今このコロナ禍の中、どうなっているだろう。

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さっぱりとして、もりもり食べるお昼ごはん。
運動の後の、気持ちいい空腹の感じ。

出産から一日経って、身体が強烈な筋肉痛になっていることに気づいた。
特に上半身、腕と背中がすごい。
そういえば前の出産のときもそうだった。
前回はなんでそんなに筋肉痛なのかすぐには分からなかったのだけれど、考えてみると、いきむときは全身にすごい力を入れているのだった。
産道(?)に効果的に力を集中させるため、両手は分娩台のグリップをすごい力で握り、背中から脚から、全身の筋肉を総動員して産むのだ。

あの筋肉痛と、かいた汗の量、匂い、そして産後初めて浴びたシャワーの感覚は、なんとなく、ずっと記憶していたい。