『歌に私は泣くだらう』

歌人である永田和宏が、妻であり歌人である河野裕子との、最後の日々を書いた本。同じく永田和宏が、妻との出会いからの日々を書いた『たとへば君』も凄かったけれど、 この本はそれに輪をかけて凄みがあるというか、全編にわたって切実というか。 涙なしに…

『優駿』

姉から借りて読み始めた本。馬の産地である北海道の日高地方と、主人公の馬主の住む関西を舞台にした物語。 まだ序盤だけど、北海道の景色が目の前に浮かんでくるようで、もうそれだけで胸が広々する。北海道にいつか住みたい、という長年の夢は、いつか叶う…

食卓に珈琲の匂い流れ

雨続きの秋の午後。 息子はぐっすりお昼寝中。ずぅっと前に買って時々パラパラ眺めては、温存していた『茨木のり子の家』を、なんとなく今かなという気がして取り出してみた。曇りガラスのような装丁が、秋雨の午後にぴったり。 なんとなく、「ちいさい秋み…

『あのこは貴族』

「東京にしかいない人種を描いた」というふれこみに惹かれて読んだ本。何ヵ月か前に日経の記事で、地方出身の作者が「東京に住んでみないとわからないことだった最たるものが、東京には貴族がいる、ということでした」と語っていたのを読んで、俄然興味が出…

『坂の途中の家』

保健師の知り合いに勧められて読んだ本。 読みごたえのある一冊だった。主人公は、乳児虐待事件に裁判員としてかかわることになった、小さい子を持つ主婦。 裁判経過に伴って自身の家族をふり返らざるを得なくなっていくのだけど、 そのふり返っていく過程の…

妊婦サウダーヂ

出産してからというもの、育児エッセイや育児漫画を読むのが趣味になった。最近読んだのは川上未映子の『きみは赤ちゃん』。初めて産婦人科で妊娠を確認してもらったときの気持ち。 妊婦検診の日々。 無痛分娩の、刻々の流れ。 産後しばらくの追い詰められた…

すたこらさ

一度ハマるとしばらく同じ人の本ばかり読む傾向があって、最近はずっと益田ミリづいている。味わい深い「すーちゃん」シリーズ。 第三弾の「どうしても嫌いな人」は、何とも言えず、ジワジワジワジワくる一冊だった。そうそう。 日常で避けられない嫌いな人…

a possible “I”

益田ミリの本が読みたくて。この作品の主人公は、35歳独身・彼氏なしのすーちゃん。 老後に不安を抱きながら、カフェ店長として楽しく働いている。そのままずっとすーちゃんの話かと思っていたらそうではなく、 すーちゃんの周りの、それぞれの事情を抱えた…