新潟旅行記④二日目中盤 酒蔵でハッスルする

お昼ごはんの場所から、再び宿方面へ戻ること20分。
予約していた見学時間を10分ほど過ぎて、先ほど見かけた酒造に到着した。
予約のページに「遅れた場合は途中からの見学になります」と書いてあった通り、既にその時間の見学者一行は進んでいて、後を追いかける形で中に案内してもらった。

「今代司(イマヨツカサ)」というその酒蔵は、施設がとてもおしゃれで、新潟駅から徒歩圏内ということもあって、かなり人気のようだった。
後から観光バスで来ていたご一行もいて、酒蔵見学は大盛況。
私たちの回の案内者は、きっと社内の地位はだいぶ高いんだろうなという、飄々とした年配の男性だったのだけれど、このおじさんがまぁ、話がめちゃくちゃ上手い人だった。
何百回、いや何千回と案内をこなしているであろうのに、しゃべりが機械的でなく臨機応変で、その回の客層に合わせてちょいちょいネタも変えている感じ。
噺家さんのようで、つい聞き入ってしまった。

この酒蔵で作っているお酒はすべて純米酒だそうで、私たちは米を磨く話のところから参加した。
米をどれぐらい磨くか(精米度合)によって、純米酒純米吟醸純米大吟醸と名前が変わるのだそう。
下の写真は、一番小さく削った段階の米。

米粒が半分ぐらいの大きさまで削られていて、なるほど、だから純米大吟醸は高価なのだった。
原料がいっぱい要るもんね。

続いて蔵の中に進むと、背丈より高いタンクがいくつも並んでいた。
さすがに樽ではなくて、金属製のタンク。
その中で発酵が進んでいるらしいのだけれど、おじさんによると、タンクの中は発酵途中に出る二酸化炭素が充満していて、もしも落ちたら酸素がゼロなので即死らしい。
見学者の中から「酒に溺れて死ぬ(笑)」という声がして「うまい!」と思っていたら、おじさんが笑いながら「それよく言う人がいるんだけどさぁ。今日なんか若い人が多いけどさぁ、酒好きのおじさんがたくさんいるときなんか、みんな言うんだよ、『酒に溺れて死ぬなら本望だ』とかなんとか。だけどこれ、溺死じゃないよ、窒息死だっつーの」。
どっと笑いが起きる。
万事がそんな調子で、おじさんの軽妙なトークで案内は進んでいった。

ちなみに、この発酵の途中で酵母を早めに死なせて発酵を止めると、ブドウ糖が多く残って甘口のお酒になるらしい。
なるほど、勉強になる~。

発酵したタンクの中身はどろどろの状態(もろみ)で、これを機械で圧搾すると、液体部分と固形部分に分かれる。
その液体部分が「清酒」、残った固形部分が「酒粕」なのだそう。

搾る機械は意外にも横から圧力をかける仕組みで、酒粕は板状に残る。
それを割れないように綺麗にはがして、酒粕として売るのだそう。
確かに、売られている酒粕って板状になっている。

そうして搾られた清酒部分が、ホースの中を通ってまた違うタンクに送られる。

「そのホースの中に今純米酒が通ってるんだよ。そこに穴開けてストロー差したらチューッと飲めるよ(笑)」とおじさん。
純米酒が通ってると言われたら、おいそれと踏めない。

お酒造りの解説はだいたいこのあたりまでで、あとは昔の酒造り道具の展示を見たり、撮影スポットで記念撮影をしたりして、見学は終了となった。

全然知らなかったけど、この酒蔵は以前JR東日本のポスターに使われたらしく、たぶんそれに写っているのはこのおじさんだった。

見学が終わると、無料で試飲ができるお土産コーナーへ。
飲めない人向けにノンアルコールの甘酒も用意されていて、至れり尽くせりだった。
有料の試飲を申し込むと、何種類か飲み比べもできるよう。
お土産売り場は華やかなディスプレイで、後の予定が押していたから酒蔵見学だけのつもりだったのに、「ちょっと見て行こうよ」となった。
その場で食べられるソフトクリームなんかもあって、子どもたちはもう完全に食べる気満々。
そりゃそうだ。子どもにとっては、酒蔵の楽しみなんてそれぐらいしかない。

ここで夫が「運転よろしく」と言ってきた。
まぁ、そう来るだろうなとは予想していた。
私は絶対いま飲みたい、というわけではなかったから、平和的に運転交代して、夫は日本酒の試飲を、私は甘酒試飲&子どもたちはソフトクリームを楽しむ。

そうこうしていたら、子どもたちがお土産コーナーにあるガチャを見つけてやりたいと言い出した。
ガチャの類はキリがないから、ふだん一切やらない我が家。
即却下して特に気にせずにいたら、後から来た団体が、何やらガチャに群がり始めた。
その団体は全員20~30代の男性で、見た目はなんとなくもっさりしており、でも全員なんとなく頭が良さそうで理系っぽい。
何だろう、アニメ好きの人たちの聖地ツアーとか...?何かガチャにいい景品があるんだろうか...?
と耳を澄ませていたら、やはり同じように気になったらしい夫が「このガチャ、かなりお得じゃない?」と言ってきた。
よく見ると、500円でハズレなし、お酒とノンアルコールの二台に分かれていて、ノンアルコールの方には、買おうと思っていたおやつが最下等の景品に入っている。

夫が素早くお土産コーナーを見てきて計算したところ、場合によっては買うより高い景品があるし、下の方の景品でも原価率(?)はかなり高いとのこと。
要は、好きな銘柄は選べないものの、子どもたちにガチャを回す楽しみを与えてあげられて、かつお土産も買えるという仕組み。
「え、だったらやろうよ!」と急に方針が変わり、子どもたちは大喜び。
6回分ぐらいのガチャを回させてあげて、自宅用と人へのお土産用のお酒やら甘酒やらをGETした。

私たちの前に群がってやっていた男子集団から聞こえてきた話では、だいたい1,2等は出なくて、3等以下が出るという統計データだった。
私たちは6回のうち3回3等が出たから、まずまずの成果。
ガチャのカプセルの中には等級別に色の違うコインが入っていて、レジで景品と引き換えに行くのだけれど、レジのお姉さんも「いいのいっぱい当たりましたね!」と言っていたから、なかなかラッキーだったのかもしれない。

施設がとにかく綺麗だったので、ここで次男のオムツ替えも済ませたりしていると、40分ぐらいの滞在の予定が、気づけば一時間半になっていた。
この後は私が絶対寄りたい新潟にしかないお店と、子どもたち待望の水族館の予定があるので、急いでお店を出て駐車場へ。

駐車場には大きな観光バスが止まっていて、先ほどの男子集団が乗り込んでいくのが見えた。
フロントの団体名を見たら「なんとかシステムズ」となっていて、「あ~、SEかプログラマーかぁ~!そういう感じだわ!」と夫と妙に納得しながら酒蔵を後にしたのだった。