新潟旅行紀⑥三日目(最終日) レンタカー延長してハッスルする

最終日の朝は雪。

この日は、燕三条に戻りながら「弥彦(やひこ)」というエリアを観光することにしていた。
新潟市から車で50分ぐらいの村で、古い神社と、そこから出ているロープウェイがあるのだ。
当初はそのロープウェイに乗るぐらいしか予定を立てていなかったのだけれど、昨日の酒蔵見学が思いのほか面白かったために、夫がまた別の酒蔵見学をしないかと言い出した。
弥彦村の近くにネット予約できる酒造があるという。

もともとレンタカーは丸二日(48時間)のプランで、返却後は新幹線の出発まで燕三条駅付近で何か観光しようと言っていたのだけれど、初日に見た感じでは徒歩で散策するという雰囲気では全然なく、どうしようかと迷っていたのだ。
レンタカーを一時間延長すれば新幹線までの時間も何とかなりそうだったので、その分を酒蔵見学に充てようということで話がまとまった。

早めにチェックアウトして、弥彦村へ車を走らせる。
途中は、雪をかぶった田んぼが広がる風景。

新潟市内もずっと田んぼが広がっていたけれど、新潟って平野なんだなぁと今回改めて知った。
昔社会科で習った「越後平野」が、まさにこれなのだ。
海外旅行でも国内旅行でも、昔習った机上の知識が、目の前の風景と重なって「あぁ、これが!」となる瞬間が好きだ。
ブラジルで見たテラローシャという土の色とか、ドイツ→チューリッヒの上空から見たシュヴァルツヴァルトとか、ヨーロッパに行くときの機窓から見たいろいろな地形(卓状地、蛇行河川の三日月湖etc.)とか。
今回の新潟旅行でも、立派な蔵があったり街が広範囲に広がっていたりと、新潟がとても栄えていた時代の名残があちこちから窺えたのだけれど、それは江戸時代の物流の動脈だった北前船が新潟を経由していたからで、新潟は人もモノも頻繁に行き交う主要都市だったのだ。

そんなことを思いながら風景を見ているうちに、目的の酒造に到着した。

今回の酒蔵は家族経営と思われる小さな酒蔵で、ここで作られるお酒はほとんど全て地元で消費されるから、県外には出回らないのだそうだ。
本当の、いわゆる地酒というやつだ。

酒蔵見学を二ヶ所でしてみて、同じ新潟の酒造でも、ずいぶん違うものだなぁとちょっと驚いた。
もちろん規模も違うのだけれど、見学のときの説明のポイントもけっこう違うのだ。
このときの酒蔵見学は私たちだけで、使う道具やなんかも間近で見せてもらい、いろいろ質問すると答えてくれたりして、短いけれどとても充実した見学だった。

これは最初の米を磨くときに、大量の米を持ち上げる機械「楽だ君」。
吟醸大吟醸となるにつれ米が小さくなることは既に聞いていたけれど、ふとその削りかすはどうするんだろうと思って聞いてみたら、「いろいろですね。多くは糠として使われて、あとは米粉、おせんべいとかの原料になるものもあります」と聞いて、なるほどー!と納得した。
確かに、柿の種も雪の宿も新潟のメーカーだ。

これは米を蒸す場所で、昔は薪で火を焚いていたから、かまどの下に、地下に降りる階段があったのだそう。
そして、薪で焚いていた頃は必ず煙が出るから、昔の酒蔵には煙突があったのだそうだ。

蒸した米に麹菌をふりかけ、酵母を加えて発酵させるということなのだけれど、またふと疑問が湧いて、「その麹菌ってどこから来るんですか?」と聞いてみると「買うんです」とのこと。
その後の答えが面白かった。
「(麹を作っているのは)日本で10軒ぐらいしかなくて。最古の職業って言われてるんです」。
うろ覚えだけれど、そうやって麹菌を持ち運びできる形にしたのは日本だけ、とも言っていたような。
あ~、なんか昔チラッと読んだ『もやしもん』にそんなことが書いてあったような気がする。
面白い。奥深すぎる、日本酒造り。

見学を終え、小さなカフェスペースで子どもたちと一緒に小休憩。
子どもは麹アイス、私は寒かったこともあって温かい麹ドリンク。

この麹ドリンクが、ちょっとびっくりするほど美味しかった。
麹と豆乳だけで作られているらしいのだけれど、なんとも言えない深みというか甘味というか、コクがあるのだ。
ドロっとしているのにしつこくなくて、後味はさっぱり。
そして、添えられた干し柿とめちゃくちゃ相性がいい。
甘酒系の飲み物がこれまでなぜか苦手だったのだけれど、これを飲んで以来、ちょっとハマりつつある私であった。

酒造を後にして、弥彦山ロープウェイへ。
いったん落ち着いていた雪がまた降り始め、風も出てくる中、山頂駅へ向かった。

634mの山頂近くの駅は、一面雪景色。

ここへ来て、念のため持ってきていたレインコートが大活躍。
子どもたちはこの冬一番の雪遊びを楽しめたし、私は念のため用意した旅の荷物が全てちゃんと役に立って大満足。

晴れていれば佐渡島も見えるということだったけれど、この日は海の方は何も見えず、反対側の越後平野だけがずっと向こうまで広がっていた。

ロープウェイは20分毎の出発なので、冬季でお店も閉まっている山頂には20分弱だけの滞在にして、山麓駅に戻ることにした。

ここのロープウェイは、久しぶりに昭和を思い出させるようなレトロさだった。
片道5分の道のりに、ちゃんとガイドさんがついていて、バスガイドのようなセリフ回しで観光案内をしてくれる。
そういえば、昔の観光地ってそんな感じだった。

下界に戻って、もうほとんど時間がない中、弥彦神社にだけちらりとお詣り。
万葉の昔からあるという古い神社で、弥彦村はその他にも全国唯一の村営競輪場があったり温泉があったりと、本気で回れば一日観光できそうなエリアだったけれど、今回は残念ながらロープウェイと神社しか行けなかった。

レンタカーをギリギリで返した後は、天気も悪く子連れで歩いて行ける範囲が限られていたので、結局古いイオンモールにあるサイゼリアでゆっくりすることにした。
そのすぐ向かいの建物に、燕三条の製品がずらりと並んだ物産館があって、子どもと夫が休憩している間、私だけサッと見に行くのにもちょうど都合が良かったのだ。

サイゼリア、めちゃくちゃ久しぶりに来たけど案外おいしかった。

帰りの新幹線では、当然ながらみんな爆睡。
寝ていたせいであっという間に着いた東京駅で、珍しい車両の連結を見たいと騒ぐ夫&息子につき合って、盛りだくさんの新潟旅は終了となった。

最後に時間があったらもう一度寄りたいと言っていたストックバスターズには結局寄れなかった。
ストックバスターズも再訪したいし、弥彦村もじっくり訪ねてみたいし、新潟市内の雑貨屋さんも再訪したいし、ウオロクの刺身もまた食べたいし、まだまだ行きたいところがいっぱいだ。
またいつか、新潟は再訪したい土地になった。