四半世紀前の真夏、灼熱のギリシャ・イタリアに旅行したことがあった。
当時の(今も?)南ヨーロッパにはシエスタという習慣があって、観光地といえども、午後の一番暑い時間帯にはお店が軒並み閉まってしまう。
なのでその時間帯は現地にならっておとなしくホテルに戻り、涼しい部屋でお昼寝をして体力を取り戻してから、夕方気温が下がった頃にまた街へ繰り出していた。
二十数年後、まさかその習慣が必要になるほど日本が灼熱地獄になるとは。
今回の大阪滞在は、同じ宿の連泊にしておいて本当に正解だった。
お昼ごはんを食べた後、再び地下鉄に乗って少し歩いて宿に着いたときには、身体中から熱気が立ち上っていた。
ロビーに入った瞬間の、生き返ったこと。
そのまま部屋でエアコンを最強にして汗だくの服を着替え、カーテンを引いて暗くした静かな部屋で、家族みんなでしばしお昼寝をした。
二時間近く休んで、起きたときには体力がだいぶ回復。
あのまま外をうろついていたら、たぶん夜ごはんまでもたなかっただろう。
夜は電車に乗って焼肉のメッカ鶴橋に食べに行く案と、歩いて通天閣付近を観光する案の二つがあったのだけれど、せっかく歩ける範囲に宿をとったので、今回は通天閣付近で観光がてら夜ごはんというプランに決まった。
いざ出かけようとすると、長男が「さっき買ったやつ飲みたい」と言い出した。
なんばグランド花月で、お土産の「薬」を買っていたのだ。
ガンバレールを飲んで「力が出てきた!」と張り切る子どもたちを連れて、いざ、夜の新世界へ。
私が子どもの頃はとにかく汚くて怖いイメージだったけれど、インバウンドが増えたおかげか、街は(きれいとは言い難いものの)ずいぶん治安がよくなった。
人もものすごく多いし、歩いていて感じる怖さが全然違う。
とりあえずざっと端から端まで歩く。
通天閣は上るのに30分待ちとかだったので諦めて、子連れでも入れそうな串カツ屋を探した。
どこも喫煙可というのは想定外だったものの(東京だと今は条例でほぼどの店も禁煙)、店内が小綺麗で換気が良さそうなお店があったので、そこに入ってみることにした。
夫はたぶん二回目、子どもたちは初めての大阪の串カツ屋。
基本のセットに入っていたしょうがの串カツが嬉しかった。
最近知ったのだけれど、紅しょうがの揚げたものって、どうやら大阪近辺にしかないらしいのだ。
串カツは子どもの頃あまり食べなかったけれど、しょうがの天ぷらはかなりメジャーで私の大好物だったので、久しぶりに食べられて大満足。
腹五分目ぐらいでお店を後にし、あとは飲み物を買い出しがてらスーパーに行ってみようということで、また宿方面へ戻りつつ、夜の新世界をぶらぶら。
あちこちに射的や弓道場を模したお店があって(何かいわれがあるのだろうか?)、長男が「どうしても射的やりたい!」と言うので、まぁこれも経験だからと、やらせてあげることにした。
射的はだいたい500円で7発が相場になっている。
先客がやっているところを後ろで見て予習させてから、いざ長男の番が来た。
先客は一等の景品をずっと狙って何度か命中させていたのに、結局倒すことができなかったので、「あれは倒れないようにできているんだよ」と夫に教えられ、下の方の景品を狙う息子。
トルコの無課金おじさんとは違って全身で狙うスタイル。
結果、なんと二個もお菓子をGETして、長男は大満足、私たちも「まぁこれなら値打ちあったね~」と言いながら新世界を後にした。
宿の最寄りスーパーは他にもあったのだけれど、せっかくだからと、大阪名物「スーパー玉出」へ。
パチンコ屋と見紛うド派手ネオンサインは健在だった。
いつか、家族と一緒にベッタベタの大阪観光をしてみたいと思っていたのが、今回の旅で大分できた気がしている。
大阪を離れてもう長くなった自分にとっても、ちょっと観光客気分というか、インバウンドの目線で楽しむことができた一日だった。
実際、行く先行く先、本当に外国人(特に今回は欧米の)が多かったのだ。
おかげであまり怖い思いをすることもなかったし、(私が苦手だった)ディープすぎる大阪にまで踏み入れることなく、ほどよい距離感で大阪を味わうことができた気がする。
翌最終日は、大阪を後にして神戸方面へ向かうのだった。