南紀白浜旅② 嵐の本州最南端

腹ごしらえをした後は、疲れた夫と運転を交代し、目的地白浜のさらに先にある、本州最南端の潮岬を目指した。
端っこ好きの夫が、今回和歌山に行くならどうしても最南端に行きたいと言うのでそうなったのだけれど、潮岬と言えば、大型台風が来たときによく中継される場所。
こんな大雨の日に...とは思いつつ、まぁちょっとした好奇心もあった。

紀伊田辺から潮岬のある串本までは、なぜか高速が無料区間になっている。
ところが、この高速の入り口がとても分かりにくくて、私は一瞬の分岐を間違え、反対の大阪方面に乗ってしまった。
「ヤバい、無料区間だったのに料金かかっちゃうじゃん~」と泣きそうになりながら、次のICで降りようとしたら、やっぱりよく間違える人がいるのか、料金所に「方面を間違えた人は申し出てください」的な貼り紙が。
ダメもとで申し出てみたら、なんと手続きしてくれて、無事無料区間の反対方面に乗ることができたのだった。

「よかった~」と言いながらさっきの間違えたICまで戻ると、さっきほど分かりにくくはないものの、また分岐が現れた。
助手席の夫に「ここでまた間違えて大阪方面行っちゃったら『死ね!』って感じだね~(笑)」と言ったら「それはほんとに『死ね』だわ」と真顔で言われる私。

そんなこんなで時間をちょっとロスして、さらにまた途中で雨が激しくなってきたのもあって、串本に着いたのは予定より一時間遅れくらい。
本当は串本海中公園という水族館にも行きたかったのだけれど、雨も激しいし、車を降りる回数を減らすため、潮岬だけを目指すことにした。

本州最南端の碑のある場所は、広めの駐車場のような場所になっている。
駐車場から最南端の碑までは徒歩1分ぐらいで、車を停めたときにはちょうど雨が少しましになっていたので、急いで子どもたちを連れて向かった。
ところが、その徒歩1分ほどの間にまた雨が激しくなってきた。

とりあえず潮岬っぽい写真を撮って、その近くにあった謎の休憩所みたいなところに避難。
濡れた体を拭きながら、「なんだろうねここ?」と見ていたら、何やら古い潜水道具が展示されている。
宇宙服みたいなヘルメットとスーツは、ちょうど今再放送の「あまちゃん」に出てくる道具にそっくりで、長男も「これあまちゃんじゃん」。
雨はしばらく止まなさそうだったから、避難がてらその展示を見ることになったのだけれど、これが予想外に面白かった。

串本の人々は、その昔(明治ぐらい?)、太平洋をずっと南に下ったオーストラリアの方で、潜水事業に携わっていたのだそうだ。
何のためかというと、貝を採るため。
高級ボタンの原料になる貝があって、それでひと儲けしたのだそうだ。
ボタンを取った後の貝が展示されていて、「なるほど、こうやって...」とすっかり見入ってしまった。

何十(何百?)メートルもの深さへの潜水は、専用の重い重いスーツを身に付け、海上の船からポンプで酸素を送るのだそう。
その模型が展示されていた。

人の小ささから潜る深さが分かって、「当時でこんな深くに潜れたんだ!」と夫とびっくり。
ボタンを押すと始まる記録映像なんかも見たりして、なんだかすっかり長居することになった。

こういう、予定外の出会いがあるのが旅の醍醐味だ。
潮岬や串本海中公園を目指して来ることはあっても、この休憩所を目指して来ることはまずないだろう。
私たちも、晴れていたらきっとここには寄らなかったし、寄ってもトイレを借りたぐらいで展示は通り過ぎていたはずだ。
だけど思いがけず足止めを食らったおかげで、本州最南端の地である和歌山の、さらに突端の人々の歴史を知ることができた。

雨風は一向に止まず、休憩所もそろそろ店じまいの時間になってしまったので、大降りの中、最南端の碑で無理矢理写真。
雨脚の強さが伝わるだろうか。

傘が役に立たない濡れっぷりで車に戻り、そこから一時間ほどかけて、目的地の白浜にようやくたどり着いた。

今回の宿も、北海道のときと同様コンドミニアムタイプ。
子連れ旅にはこういう「家みたいな宿」が本当に便利だ。

チェックインしたのは19時で、もうすっかり夜。
この日は予め調べてあった地元の居酒屋で晩ごはんを食べることにしていたので、荷物を置いたらすぐにお店へ。

ほぼずっと運転してくれていた夫をねぎらって、飲酒権は夫に譲る。
一番の売りメニューである鯛めしでシメて、メインイベントである明日のアドベンチャーワールドに備え、大人も子どもも早々に眠りに就いたのだった。