東伊豆へ

夏休みの終盤。
お盆にどこも出歩かなかった代わりに、一泊ぐらいの近場旅行をということで、東伊豆へ行ってきた。
夏休みに入ってから決めた旅だったので、あまりガチガチに予定は立てずの、のんびり旅行だった。

レンタカーを走らせ、伊豆半島へ。
お昼時にどのあたりを走ることになるのか分からなかったので、そろそろかなというあたりに差し掛かってからGooglemapを調べ始め、臨時休業トラップやら何やらを経て、ひなびた食堂にたどり着いた。

大人たちは定食、子どもたちはカレー。
味はモノによる感じで、カレーと天ぷらはおいしかった。
それよりとにかく暑い食堂で、後で分かったところでは、エアコンの風が当たるところしか涼しくないのだった(扇風機かよ)。
値段は安いものの、出てくるのはめちゃくちゃ遅いし、愛想は悪いしで、まぁトータルで見てハズレかなというお店。

ただ、そういえば昔はどうやって旅先でお店を探していたんだろうと思うと、こういうお店に当たるのも、それはそれでありなのかもしれないなと思った。
何のネット情報もなく、お昼をとうに過ぎて通りかかった田舎の道沿いで、ふらりと入ったにしては、まぁまぁだったのかもしれない。

小学生の頃、家族旅行でそういう、県道だか国道沿いのお店に入ったことがあった。
いつもの旅行では、たいてい昼時に観光地に立ち寄るプランになっていたのだろう。
そういう、知らない道沿いの店に「ふらりと入る」は珍しいことだった。
岐阜の山奥の、やっているんだかいないんだか分からない小さな食堂で、父母は、そこを逃すともうしばらく食べられる店はないと判断したのだろう、警戒しながら店の戸を開けた。
が、店内には誰の姿も見えず、「すみませーん、やってますかー」と声をかけると、奥から店主がびっくりしたような顔をして出てきたという。
その瞬間、父母は嫌な予感がしたらしい。
何を食べたかはもうほとんど記憶にないのだけれど(たぶん、極端にはハズレにくいという点でざる蕎麦とかにしたのだった気がする)、衝撃だったのは箸だった。
ちょっと湿った、割られた割り箸が出てきたのだ。
飲食店だというのに、明らかに洗って使い回された、割られた割り箸が。

以来うちで、「洗った割り箸」「割られた割り箸」はちょっとした語り草になった。
あの店に比べたら、今回のお店はよほどまともだった。

15時のチェックインを少し過ぎて宿に着き、私と次男は部屋でひとやすみ。
夫と長男は、ホテルの小さなプールへ出かけて行った。
部屋はほどよく冷房が効き、和室の畳の匂いもあって、私はゴロゴロしながらうとうと。
いつの間にか次男も横ですぅすぅ寝入っていて、ハッと起きると、夫からもうすぐ戻るとLINEが届いていた。
ちょうど画面を開いた瞬間に写真も送られてきて、プールから見た海に虹がかかっている。
ハッと立って窓辺に行くと、部屋からも同じ方向にきれいな虹が見えた。
よく見るとダブルレインボー。

何枚か写真を撮っていたら、一枚ごとに色が薄くなって、あっという間に虹は消えてしまった。
すごい、一瞬だった...と思っていたら、夫と長男が帰ってきた。
「虹が見えたよ!」と長男が嬉しそうに報告。

続いて、晩ごはん前にみんなでカラオケに行くことになった。
昭和なホテルの昭和なカラオケルームで、一時間歌いまくる。
とはいえ、今回は次男の初カラオケ&長男の久々カラオケが主目的だったので、半分以上が子どもソングを一緒に歌うという、ほぼ接待カラオケだった。

初めての次男はもちろんだけれど、長男も、もう字が読めるにもかかわらず、字幕を見ながら歌うというのが案外難しい。
「カラオケに慣れていない人類」というのはそういえばそうだったな!と、昭和のカラオケ黎明期を思い出した。
古くはカセットテープ、その後レーザーディスクのカラオケが登場したのは、私が幼稚園~小学校の頃だったと思う。
もう遠い記憶だけれど、それこそ旅館の宴会場とか、そういうところで子どもも歌わされた記憶がある。
最初はそういえば、映像じゃなくて冊子になった歌詞ブックだったかも(古っ!)。
カラオケに慣れていないお年寄りとか子どもは、実際初めて歌うとなかなかリズムに乗って歌えないもので、今の長男次男を見ていると、そんなことを急に思い出したりした。

カラオケの後は夕食を食べ、運転お疲れさまということで夫も私もビールとお酒を飲み(運転は結局夫だけだったけど)、私は部屋に戻ってお腹を休めてから、お風呂に行くことにした。
次男がTVを見たいと言うので、NHKニュース9を久々に見たら、ヒグマのニュース。

そう、北海道でここ数年牛を襲いまくっていた狂暴ヒグマ「OSO18」が、とうとう仕留められたのだった。
OSO18に関して、私はかなり高い関心をもってニュースを見ていたから、つい見入ってしまった。
吉村昭の『羆嵐(くまあらし)』を読んで以来、特にヒグマの熊害(ゆうがい)には並々ならぬ関心を持ってしまうのだ。
OSOがいる間は道東に行くのはちょっとやめとこうかな...と思っていたぐらいだから、仕留められて本当に良かった。
近年の熊の出没状況を見ていると、手放しで安心できる状況ではないものの、地元の人々も少しはホッとできたのではないか。

ニュースは次の話題に移り、戻ってきた夫&長男と入れ替わりに、ゆっくりと温泉に向かったのだった(続く)。