紅葉散歩。
井の頭公園は、秋が一番美しい。
スーパーの鮮魚コーナーを歩いていたら、30㎝ぐらいある大きな白身の魚が安く売られているのを発見した。
これは何とかして使いたいなぁといろいろ思案し、スマホで調べたらオーブンで料理できそうなことが分かったため、近くにいた店員さんに渡してバックヤードで捌いてきてもらうことにした。
待つこと10分近く。
その間に(ほとんど買ったことない)タイムやローズマリーをかごに入れる。
しばらくして、鮮魚スタッフと思われるおじいさんがパックを持って出てきて店員さんを探していたので、「すみません、それクロソイですか?だったら私ですー」と声をかけて受け取った。
すると、一瞬迷うような間を置いて「それ、どうやって食べるんですか?」と訊かれた。
もしかしてプロから見た何かいい食べ方が?と期待して「えっ、オススメの食べ方があるんですか?」と訊いてみると、おじいさんは照れたように笑って「いやいやそういうわけじゃないんだけど。どうやって食べるのかなぁって思って」と。
急に、心にポッと灯りがともった気がした。
バックヤードのおじいさんは、きっとお客さんと直接しゃべる機会はほとんどないだろう。
そんな中、時々表の店員さん経由で魚の処理を頼まれては、これはどんな人がどんな料理にするんだろう、何人家族で食べるんだろうと、いつも想像していたのかもしれない。
あるいは、今日の魚は大きくて丸々一匹はなかなか売れないかもと思っていたのに、調理依頼が入ったから、バックヤードで「売れたぞ~?」と話題になっていたのかもしれない。
そういう、知らなかったおじいさんの仕事の日常に(もっと言えば誰かの人生のひとコマに)自分が入り込んだような気がして、嬉しかったのだ。
「オーブンで焼こうと思って。さっき調べたら、アクアパッツァっていう、ほら、こういうハーブと」とかごの中を見せたところ、おじいさんはほぅ、というように覗き込んでから、「素敵な食べ方ですねぇ」と微笑んで去っていった。
あのおじいさんは、バックヤードに戻ってから同僚に「さっきのクロソイさぁ、オーブンで焼くんだって。なんかハーブ持ってたよ」とか話すだろうか。
行ってみたかったfactory & laboへ。
吹き抜けの、工場感漂う空間。
吹き抜けだけど、ガラスで囲われているから寒くないし、テーブルや椅子が大きめだからなんだか落ち着ける感じ。
私の思う「リピートしたいカフェの条件」は、美味しいことはもちろんだけど、「次に来たときはあそこに座ってみたい」と思える席が複数あること。
コーヒーには座り心地が重要。
紅葉の井の頭公園。
たまたま吉祥寺に用があって来たところ、公園周辺に警官や警察車両、公的な職員らしき人たちがたくさんいて、なんだか普通でない雰囲気。
勇気を出して警備の人に聞いてみたら、なんと、井の頭公園に天皇皇后両陛下がいらっしゃっているとのこと!
これは行くしかないと公園に入ると、まもなくすぐそこに現れそうな雰囲気が満々。
「いま弁天橋を渡られてますー」
「いま説明を聞き終えられましたー」
と時々アナウンスがあって、否応なしに気持ちが高まる。
待つこと10分ほどで、向こうの方から行列が現れ、なんだか白く光っている感じがするなぁと思ったら、それが両陛下なのだった。
テレビで見ていても優しいけれど、生で見るお二人はその何十倍もお優しい雰囲気で、なぜか思わず涙ぐんでしまうほど。
あのような立場に生まれて育ち、時を重ねてきた人だけが持つ光だなぁと、しみじみ納得したのだった。
本当に、いいものを見た。