エルピスにどっぷり

今期の話題作ドラマ「エルピス」がすごい。
回を追うごとに「神回」度が増していて、どっぷりハマっている。
最新回も、「神回だ!」と思った前回をまた軽く超えてきた。

(※以下、ネタバレになるのでご注意)

ストーリーの流れ、細部、どこを取っても目が離せないのだけれど、特に圧巻だったのがカラオケシーン。

そうだった。
渡辺あや脚本は、音楽の使い方が秀逸なのだった。

もう20年近く前の映画になるけれど、ある音楽シーンが好きすぎてDVDまで持っている映画「メゾン・ド・ヒミコ」も、渡辺あや脚本なのだった。
そのことを、このエルピスカラオケシーンを見てふいに思い出した。
メゾン・ド・ヒミコ」では「また逢う日まで」、「エルピス」では「贈る言葉」。
ここで!その歌を!こう使ってくるか!
という感じで、効果的に音楽を使うのだ。

「エルピス」最新回では、これまで散々あったカラオケシーンで一度も歌わなかった浅川恵那(長澤まさみ)が、周囲に促されてついにマイクを握る。
そこで歌うのが「贈る言葉」。
その直前、これまた神演技のチーフプロデューサーが尾崎豊「卒業」を歌っていて、その時点で既に「ここで尾崎豊を持ってくるか!」という感じだったのだけれど、その次が「贈る言葉」。
これまでのストーリー、人間関係を見てきた視聴者としては、これ以上ない選曲になっているのだ。

すべてが脚本家のアイデアではないかもしれないけれど、渡辺あやの脚本は、音楽の使い方という意味でも、倉本聰に迫るものがあると思う。
倉本聰の「北の国から」は、何度も見て、もうフリークといっていいレベルのファンだけれど、あのドラマも、流行歌の使い方が秀逸。
その音楽を使うことで、場面だけでは喚起できない感情が呼び起こされるのだ。
それを計算してやっているのが本当にすごいと思う。

カラオケシーンだけでももっと熱く語れるけれど(笑)、今回のエルピスは、細部もいつもにも増して良かった。
役者も上手いのだ。
恵那が預けたスマホにチーフプロデューサーが戸惑ってるシーンのセリフとか、爆笑してしまった。
あれ、アドリブなのかな。脚本だとしてもすごい。
それから、斎藤(鈴木亮平)の、毎回前回を超えてくる色気。
同じセリフでも、声色とかが「そう来る!」と思わず唸る言い方。
「たくちゃん!」のママ(筒井真理子)が前回出してきた「和歌山の田舎出の成金弁護士が...」のセリフも、神がかっていた。
話題の(?笑)副総理も、モデルとなってる人物に似すぎだし。

主要な登場人物が、清濁両面きちんと描かれて、一面的でないのは脚本家の力だろう。
たくちゃんのママ然り、チーフプロデューサーの「軽薄なのに凄みのある人物像」然り。
権力の犬となっている斎藤の、あらがいがたい魅力にも説得力がある。

細かいところでは、海老田天丼(梶原善)の番組オープニング海老ジェスチャーが好き(笑)。
あれは梶原善のアイデアなのかな。
「フライデーボンボン」のオープニング曲も、いつしかけっこう好きになってしまっている。

毎週リアルタイムではなかなかゆっくり見られないから、翌日の午前中にワクワクしながら見ている。
社会派ドラマでは、ここ数年で間違いなく一番の傑作だと思う。
次の週明けが楽しみで仕方ない。