掛川からローカル線で、コトコトと緑の中を抜けて行く。
降り立ったのは、フィンランド?
初めて一人で東京に来たのは大学受験の時で、
どこに泊まったのだったかはさっぱり覚えてないけれど、JR線から見たお堀の風景が、長らく私にとっての「東京」の景色だった。
市ヶ谷の釣り堀は、二十年前の記憶の景色とほとんど変わっていなくて、古いアルバムの写真を見てるみたいな気分になる。
もっともっと昔、この釣り堀ができた頃は、このあたりはもっとのんびりとして、高い建物もそれほど多くなく、手軽に立ち寄れる遊び場という感じだったんだろうか。
その頃の東京に行ってみたい。
結局私は二次試験を受けないまま、東京の大学には行かなかった。
山手線の中で、昼間の日光に大量の埃が透けて舞うのを見ながら、「あぁ、ここには住めないな」と思ったことを強く覚えている。
事前に情報を集めるにも、インターネットも何もない時代だった。
あの頃通りかかった東京は、東京の僅かな僅かな片鱗だった。
久しぶりに夫も一緒の小旅行へ。
新宿からロマンスカーに乗り込み、西へ西へ。
都心の風景から、多摩川を越え、だんだん緑豊かな景色に移ろっていく。
初めはロマンスカーでなく普通に行くつもりだったのだけど、
子連れ旅の便を考えて、急遽ロマンスカーを予約。
「移動って考えるとわざわざもったいない気がするけど、今回は旅や!旅なら移動手段も旅の大事な一部だからね!」と夫。
そうそう、そう思える人だから、旅の相性がよかったんだよなぁと、改めて思い出した。
目的地までの手段としてではなく、移動途中そのものを楽しめる人だから。
やっぱりそれは、人生に通じる気がしないでもない。
そんなことを思っていたら、あっというまに小田原に到着したのだった。