中国の花

数ヶ月に一度行く都心の病院へ。

今年は暖かくて、気がついたら春先の大好きな花、ハクモクレンが散りつつあったのだけれど、ここではちょうど満開だった。

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今年もこの花の盛りをちゃんと見られてよかった。

私がたぶん一番好きな作家である幸田文の随筆に、木蓮について書いた短い作品があった。
読んだのはもう随分前で内容もうろ覚えだけれど、幸田文が十代くらいの頃に、父露伴木蓮について交わした会話を書いた随筆だった。
文が木蓮の木を愛でていると、露伴が「この木はどこの国の感じがするか」というようなことを尋ねる。
文はいろいろな国を思い描いて、フランスのイメージに行き着き、露伴にそう答えるのだけれど、
露伴は珍しく文の言ったことを否定せず「それも悪くない」というようなことを言った後、「自分はこれは中国(支那)趣味だと思う」というようなことを言うのだ。
それを聞いた文は、父のセンス、その裏にある教養の深さに感銘を受け、見れば見るほど木蓮はフランスではなく支那趣味に見えてきた...というような随筆だった。

木蓮を中国っぽいと感じるそのセンスに、私も深く感銘を受けた。
確かに言われてみれば、木蓮は中国的な美しさだ。
その随筆を読んで以来、ハクモクレンを見るたびに思い出し、中国をイメージするようになった。

あれはなんという作品だったか。
久しぶりに幸田文が読みたくなった。