豊洲

長男が、五回目の誕生日を迎えた。

クリスマスや誕生日のたびにおもちゃが増え、お下がりも含めるともうかなりの数になってきたので、夫と相談して「これからは、親からの誕生日プレゼントは何かイベントにしよう」と決めたのが去年のこと。
一年近くかけていろいろ考え、5歳だしちょうどデビューするのにいいんじゃないか、と選んだのが「キッザニア東京」だった。
遊びながらいろんな職業体験をできるという、自分が子どもだったときにあったら絶対ハマっていただろうなというテーマパークだ。

事前にいろいろ調べる中で、とにかく朝早く行った方が良さそうだということが分かったのと、平日の方がまだ空いているので誕生日当日の平日にしたのだけれど、ラッシュアワーのど真ん中を避けるため、大人は夜が明けるか明けないかの頃に起きておでかけの準備。
通勤客の中に赤ちゃんと幼児という、なかなか場違いな感じでいざ豊洲に向かったのだった。

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ものすごく久しぶりに来た豊洲駅は、ホームがびっくりするぐらい広がっていた。
線路があった部分に蓋がされて、だだっ広い通路になっている。
どうやらオリンピックの混雑緩和策だったよう。
所々にホームドアの名残があって、なんだか不思議な気分だった。

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十年近く前、豊洲にしょっちゅう来ていた時期があった。
当時つき合っていた人がそこから遠くないところに住んでいて、海と広い道が好きだったその人が、豊洲をえらく気に入っていたのだ。
当時は私も東京の地理にあまり詳しくなくて、特にすごく行きたいところもなかったのと、当時の職場が有楽町線だったので豊洲に集合してごはんを食べたり、ららぽーとで映画も見たことがあったような気がするけれど、残っているのは苦い記憶ばかりだ。
豊洲でレンタカーを借りて出かけるときの待ち合わせでうまく落ち合えず、やっと落ち合えた瞬間一方的にものすごい文句を言われたこととか、暑い季節に、汗をかくから「あんまり長く外を歩きたくない」と言ったのに湿度の高い海近くをけっこう歩かされた挙げ句、からかうように汗すごいねと言われたこととか。
こう書くと本当に「別れて正解な奴だな」としか思われないだろうけれど、結局のところ、その人は東京という土地に全く向かない人だったのだと思う。
転勤で東京に来て、たまたま私も東京にいたその一年は、その人の欠点がとても出やすい状況だった。
いいところが遺憾なく発揮されていた、別の土地に暮らしていたときのその人のことも知っているから、余計にそう思う。
結局、最後の一年を東京で一緒に過ごした後、その人とは別れてしまった。

それから豊洲には来ていない。
その間に東京オリンピックが決定し、豊洲に選手村が作られ、築地市場が移転した。
私は夫と出会って、結婚し、子どもが生まれ、また子どもが生まれた。
彼は転勤して東京を去り、私の知らない人と結婚し、最近子どもが生まれたと聞いた。
あの頃以来ぶりに訪れた豊洲の駅は、地下鉄のホームが倍になり、ららぽーとはたくさん棟が増えて、私の知っているお店はほんの一部になっていた。

街も人も、大きく変わった十年だった。