ふかっちゃん

深津絵里の露出が最近多い。
朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で毎朝見られるのはもちろん、JR東海の新しいCMに起用されたとかで、昔のJR東海CMがまた引っ張り出されたりして、とにかくしょっちゅう名前を見ている気がする。
ファンとしては、しばらく露出が少なかった彼女を見る機会が増えて嬉しい限り。
ファンといえば、オダギリジョーのこともめちゃくちゃ好きなので、「るい編」真っ只中のカムカムエヴリバディは、毎朝「眼福眼福...」と目を細めながら見ているのだった。

ふかっちゃんが出ていればたいていの作品は好きなのだけれど、彼女が出ている中でも一番、群を抜いて好きなのが、大和ハウスのCM。
リリー・フランキーとの夫婦役で、色調を抑えた美しい映像が、穏やかなインストゥルメンタルのBGMとともに流れていく作品だ(←「大和ハウス ここで一緒に」で検索すると見られる)。
ナレーションで二人の会話も重なって流れていくのだけれど、その掛け合いもじんわり心が温まる。
憎まれ口を叩く妻に、夫が「いいさ。そのかわり、俺より長生きしろよ」と言うセリフのところなんか、何度も何度も見てしまう。

そして、会話もいいのだけれど、この作品は何より映像がすごく良くて、いつか調べたら、撮影しているのは瀧本幹也という写真家さんだった。
最近は映画の撮影もしていて、是枝裕和監督作品の常連だそうだ。
大好きな映画「海街diary」の撮影もその人だとエンドロールで知って、あぁ~なるほど!と納得したものだ。

大和ハウスのCMはシリーズものになっていて、どれも全部素敵なのだけれど、映像的に一番好きなのが「初雪編」。
深津絵里演じる妻が欧州(たしかチェコ)に出張に行く回で、海外の街の映像がまた、美しい。

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二人はおそらく少し年の差のある夫婦で、子どもはおらず、それぞれが仕事をしながら、高台にある広めのおうちに暮らしている。
妻は翻訳家で、家で仕事をすることも多いから、家事も含めて家にいる時間が長い。
夫は新聞記者で(←という設定は最近知った)、オフィスや客先や居酒屋や接待カラオケや、いろんなところで慌ただしい日々を送っている。
だけど夕暮れや夜になって、夫婦二人で過ごす時間はとても静かで穏やかで、あぁ、帰る家があるっていいなぁ...としみじみ思わされるのだ(←ハウスメーカーのCMとして大成功だと思う)。

このCMを知ったのは十年以上前で、その頃私はもちろん独身で、早く子どもが欲しいと思いつつ、暮らす土地も相手も定まらない、宙ぶらりんな生活を送っていた。
そんな生活の中で、この作品はひとつの希望のイメージを与えてくれていた。
いつか誰かと結婚しても、子どもができるとは限らない。
そういうときに、子どもがいなくても豊かな時間が過ごせる夫婦として、この二人はなかなか理想のイメージだったのだ。

その後リリー・フランキーとは似ても似つかない夫と結婚し、子宝に恵まれ、今はこの夫婦とはほど遠いバタバタ生活を送っているけれど、いつかまた夫婦二人だけの生活になったときの理想のイメージとして、この夫婦の暮らしを心の箱の中にしまっておきたいなと思う。
「夫婦どちらにもそれぞれの世界があって、外の世界でいろんな刺激を受けながらも、帰ってきた家には穏やかな時間がある」という暮らし。

ちなみにシリーズ最新作は去年のもので、コロナ禍の世情を反映したストーリーになっていた。
夫が別の土地で暮らすことをちょっと考え始めていたりして、十年見続けてきた身としては、まさかそういう展開になるとは...(家を建てるストーリーじゃなくて、売ったり住み替えたりするのか!)という驚きがあった。
でも、この二人がこの年(たぶんアラフィフ~アラカン)になって、新しい土地での生活に踏み出そうとしているんだ...というのは、これまたちょっと勇気づけられる新しいイメージだった。

私たちは晩婚だったから、子どもたちが巣立って夫婦二人になる頃には、60代になっている。
そのとき、新しい土地で新しい生活を始める可能性はあるだろうか。
ひとまず、体力だけは維持しておかないと。