オーダー靴に手を出した

とうとうオーダー靴に手を出した。
数ヶ月前から情報をフォローしていた長野県在住の靴職人さんが、東京で展示受注会をするというのを聞きつけて、満を持して行ってきたのだ。

40代に入って、そろそろ「使い捨てなくていい靴」「手入れをすれば一生履ける靴」が欲しくなってきた。
靴に限らずそうなのだけれど。
でも靴は、どんなに手入れをしたとしても、最初の設定が自分の足に合っていなければ履き続けられない。
既製品でぴったり自分に合う靴を見つけるのはなかなか時間がかかるうえ、気に入ったデザインのものとなると、さらに出会える確率が低くなる。

先日、ぴったりとは行かないものの、履いていて一番楽で、かつ仕事にも使えたシンプルな革のフラットシューズがとうとう限界を迎えて、いよいよオーダー靴を考え始めた。
限界を迎えた靴はこれまでに大がかりな修理を一度して、合計十年以上は履いたのだけれど、さすがにもう無理かなという状態になってきた。
そうなってからしばらく、代わりになる靴を探してはいたのだけれど、なかなかこれというものに出会えない。というか、探しに行く時間もそれほどない。
数年~長くても十数年ごとに一から靴を探さなければならない手間ひまを考えると、これはもうオーダー靴にして、長くメンテナンスしてもらったり、カルテのようなものを作ってもらえるところがいいのではないか。

そう意識し出した頃に、たまたまある人のブログで件の靴職人さんを知った。
デザインも好みだし、何よりその職人さんが義肢装具の学校に通っていたというのが信頼できる。
絶対、ぴったりの靴を作ってもらえそうではないか。

そうして出向いた展示受注会は、ちょうど職人さん自身が来ている日で、最終的なフィッティングを見てもらうことができた。
個人の足型を取るような完全オーダーではもちろんないのだけれど、かかとから爪先までの長さ、幅、甲の厚み、普通より出ている部分、左右差等々を見た上で、たとえば私なら「基本となる靴底は○cmだけれど、甲を覆う部分の革だけワンサイズ上に」という感じで調整してもらえる。
私の選んだ形はハイカットの靴で、これまでハイカットは好きなのにどうも足に合わなくて手を出せないでいたのが、サンプルを履いたときに「わぁ...これならいける」というフィット感があった。
足を包み込まれるような安心感というか。

しかも革の靴なので、履けば履くほど馴染むだろうし、自分仕様に育てていくことができる。
そう思うとわくわくした。
「最初に手にしたときがベストで、後はだんだん劣化していく」というモノよりも、「その時々で違う味わいを楽しめる」モノ、要は経年変化を楽しめるモノとして、長く付き合っていける靴だと感じたのだ。

今回オーダーした靴の仕上がりは、数ヶ月後。
届くのは、次の冬が近い頃かもしれない。
すぐには手元に届かないけれど、待つ時間がまた楽しみだったりする。
「夏まで生きていようと思った」(by太宰治)じゃないけれど、秋までの日々を、待ち遠しく生きるのだ。