冬の能登⑤ 三日目 能登よさらば

最終日も深い積雪。
断水はまだ復活していないようで、この日も給水場所を伝える町内放送が早朝から流れていた。

せっかく能登まで来たけれど、この雪ではもういろいろ回ることは諦め、今日も夕方の飛行機の時間までは、輪島で過ごすことにした。
チェックアウトまで宿でゆるゆる。

最後は宿の前で写真を撮って出発。
おかみさんが撮ってくれた私たちの家族写真には斜めの吹雪が画面いっぱいに写っていて、なかなか臨場感のある絵になっていた。

駐車場は昨日きれいに雪かきしていてくれたけれど、またあっという間に積雪。
ここから出るのがまぁ大変だった。

車の屋根にもフロントにも10cmぐらい雪が積もっている。
まず私がブルドーザー靴でガシガシ歩いて行って道をつけ、レンタカーに積まれていた雪かき棒で車の雪を落としてから、荷物や子どもたちを運んだ。
バックで出ようとしたけれど、コンパクトカーの小さなタイヤでは全然歯が立たず、スタックして空回り。
だいぶ雪かきしてもらって、ようやく進むことができた。

大きな通りに出るまでにも、角を曲がろうとすればタイヤがスタックしまくり。
なんとか大通りに出たものの、外は吹雪で、door to doorの車移動をするしかない。
この後は輪島塗を見ることができる施設に行こうとしていたけれど、そこも駐車場の雪がすごすぎて結局入れなかった。
電話して聞いてみたけれど、営業はしているものの、駐車場の雪かきまでは手が回らない様子。
たぶん、普段はここまで積もらない地域なのだろう。
街全体の機能が停止している感じだった。

夫はもう「走れる道ならどこでもいい」状態でやる気を失っていて、仕方ないので道の駅に行くことを提案。
輪島の道の駅は旧輪島駅だった場所らしく、トイレや土産物屋はもちろん、周辺に飲食店や公共施設もある、街のハブ的な場所のようだった。

旧駅のホームや踏切が残されている。
お土産もけっこういろいろあって、私が絶対に欲しかった「いしる」というこの地方特有の魚醤も、ここでようやく買えたのだった。

お昼ごはんは、本当は海の幸を食べたかったけれど、アクセスのしやすさから道の駅近くの中華料理に決定。
ネット評価が高かったのもあってそこにしたのだけれど、中国から来た女性がやっている本場の味で、水餃子や、息子がチョイスした「牛すじラーメン」がかなり美味しかった。

お店の女性はとても愛想がよく、子ども好きであれこれ世話を焼いてくれた。
宿も飲食店もそうだったけれど、輪島で出会った人はことごとく皆親切で、全員感じが良かった。

身体もあたたまり、お腹も満たされ、運転で疲れた夫にもやっと笑顔が戻ってきたところで、あとは一路空港へ。

空港で帰りに手続きするお得な割引(いくらか返ってくる)を申請したり、最後に長男をちょっと雪遊びさせてあげたり、さっき道の駅で買った和菓子を食べながら飛行機を見たり。
その間、長男が時々「のととおわかれするのがさみしい...」と言っていたけれど、かわいいこと言うね、ぐらいに聞き流していた。

そうしたら。
飛行機に乗る段になって、長男のテンションが本格的に下がってきた。
「どうしたの?」と聞くと、「まるくん、のとと、おわかれするのがさみしい...もっといたかった...」と、堰を切ったように号泣。

えぇぇぇ...!そんなことで...!
内心爆笑しそうだったけれど、一方で「旅先にそんな気持ちを持つようになったとは...」と成長を感じたりもして、なんだかこっちまで心が忙しかった(笑)

最近は「旅育(たびいく)」という言葉も耳にするけれど、子どものためではなく、ただ旅好きの私たちがあちこち連れ回しているうちに、息子はいつのまにかいろんな旅の感情を知るようになっていたのだ。
今回は雪でほとんど出歩けなかったから、余計に「まだまだやりたかった感じ」が強くて、お別れがさみしくなっちゃったのかもな、と私もなんだか気持ちは分かる気がした。
しばらくして少し落ち着いた長男に「能登で何が楽しかった?」と聞くと、「おへやのパーティーとか、かぞくぶろとか。あとすいぞくかんも楽しかった」。
普段は夜には食べられないおやつタイム(大人はお酒タイム)があったことがそんなに嬉しかったとは。
「しかし最初の水族館は、ちょっと無理してでも行っといてよかったね~。あれがなかったらほとんどどこも行けてないよね(笑)」と、夫ともしみじみ言い合った。

輪島はとてもいいところだったし、今回見られなかった朝市も輪島塗も、ちゃんとゆっくり見てみたい。
能登半島の先端もこうなったら必ず行ってみたいし、今回のリサーチで少しは土地勘もできたので、能登はいつか絶対リベンジしたい場所になった。
長男がもうすぐ卒園してしまうから、なかなかこれまでのように自由には休めないだろうけど、虎視眈々とチャンスをうかがっておこう。