真夏の夜の夢

アイマスクをつけて寝るようになってから、夢を見ることが増えた。
正確に言うと、一定の長さのある夢をよく見るようになった。
以前から夢は見ていたのだけれど、覚えているのが最後の一場面だけ、とか、バラバラの要素だけでストーリーを覚えていない、とか。
たぶん、夜中に窓から入ってくる街灯の光とか、朝方の空の明るさは、想像以上に脳への刺激になっているのだろう。
アイマスクをつけていると、外からの刺激が少なくなって、夢の世界が分断されなくなったのだった。

今朝の夢は、久しぶりに怖い夢だった。

息子を傷つけた同級生(?)を、夫と共犯で殺す夢だ。
夫が相手の子どもを絶対に許さない、という強い思いを抱いていて、それなら私も一緒に復讐をする、夫一人だけを悪者にするわけにはいかない、という感じで共犯になった。
殺した遺体を、夫と一緒に切断する。
二日間さえ乗り切れば証拠が消えることになっていて、まずはそこまで、なんとか夫と逃げおおせようとする。
けれど、警察の捜査がすぐそこまで迫ってきているのが分かる。
あと半日乗り切れば...という頃になって、外出した夫がなかなか帰って来ない。
初めはもう少し、もう少しの辛抱だ...と祈るように待っていたのだけれど、だんだん、これは夫は容疑者としてもう拘留されていて、取り調べを受けているのではないか、と思い始める。
帰って来ないのは、私の方にまで捜査の手が及ばないよう、時間稼ぎをしているのだ、たぶん。
夫は一人で罪をかぶるつもりだ。
初めはもちろん、夫だけを悪者にさせないために、捕まるなら一緒にと思っていた私は、「そうか...それなら私も口裏を合わせよう」と考えを変える。
よく考えたら、夫も私も捕まってしまったら、子どもたちを育てる人がいなくなってしまう。
私が二人を育てなければ。
そのために夫は罪を一人でかぶろうとしているのだから。
できるところまで口裏を合わせよう。

...と、覚悟を決めたところで目が覚めた。

明らかに、最近起こった衝撃的な事件の影響だと思われる夢だったけれど、とにかく「夫もちゃんといる、子どもたちもぐーぐー寝ている」という状況に心底ホッとした。
証拠が消えるまで息を潜めておく必要も、その先ずっと警察の捜査に怯え続ける必要も、子どもたちの養育ができなくなってしまう不安も、もうないのだ。
そう思ったら、目の前にあるこの普通の、家族が全員帰ってくる当たり前の日常が、このうえなくありがたく、尊く思えた。

起き出した夫に「怖い夢見たわ~...息子を傷つけた子を、あなたと二人で殺して遺体を切断する夢だった。怖かったわ~...」と言うと、怯えた目で「こわっ!」と言われた。
共犯になってあげたのに。