図書館に通う習慣

小学生のときは、毎週土曜日図書館に通っていた。
最初のきっかけは何だったのか分からない。
母親が父親に本を読ませるよう言われたのかもしれないし、子どもたちがいる土曜の午後を母親が持て余したのかもしれない(たぶんそっちだと思う)。
とにかく母親が毎週、私たちきょうだいを車で10分ほどの図書館に連れて行って、一時間ぐらい滞在して本を選ばせていた。
途中からは親子で自転車で行くようになり(たぶん子どもたちが危険なく自転車に乗れるようになったから)、そのうち高学年になると、子どもだけで行くようになった。
低学年の頃から毎週通っていたから、小さな図書館にある児童書で興味のあるものはほぼ読み尽くし、ノンフィクションや科学物には一切興味がなかった私は、物語を読み尽くすと落語の小咄集に手を出し、シャーロックホームズシリーズに手を出し、そのうち推理小説つながりで赤川次郎を読み始め、今で言うラノベを経て、大人の小説に移行していったのだった。

そんな図書館通いが止んだのは、私立の中学に通い始めたからだった。
土曜日も学校があったし、何より電車通学だったから、図書館のある地元の生活からはほとんど離れてしまった。
不思議なことに、小学生の頃からなぜか学校の図書室にはあまり魅力を感じなくて、中学・高校でもそうだったから、大学に入るまでの六年間は一番本を読まなかった時代だった。
たぶん数えるほどしか読んでいない。
大学時代は趣味の本ではなくレポート作成のための読書がほとんどだったから、純粋に趣味のために図書館通いが再開したのは、たぶん二十代の後半ぐらいだった。

東京に引っ越してからしばらくして、区立図書館がたくさんあることに気づき、在住だけでなく在勤者も使えると分かってからは、三つぐらいの区の図書館カードを作って、ちょくちょく利用していた。
小さな区の中にいくつも図書館があって、しかも新しい本がたくさんあるのは、やっぱり東京だなぁと思う。
それだけ豊富な税収があるということなのだ。
区立図書館は区によって、あるいは立地によって利用者層に特徴があり、ある場所の図書館には「不潔な服装や体臭の強い方はご遠慮ください」的な貼り紙がしてあったのでびっくりした覚えがある。
そこの図書館では警備員がマメに巡回していて、なんだか長居しにくい雰囲気があった。

結婚して初めに住んだ場所は、図書館から歩いて10分ほどのところだった。
妊娠中だったか、ふと思い立ってカードを作りに行ってみると、けっこう蔵書が充実していて、それからちょくちょく行くようになった。
育児系の雑誌とか、料理本とか、そういうのもけっこう豊富にあって、読みものだけではない本を借り始めたのもこの頃。
そうこうするうち、私の借りてきた図書館の本に夫が目を留めた。
「へぇ...図書館なんて行くんだ」とちょっと興味を持ったようで、何かの折に自分も行ってみたら思いのほか蔵書が充実していると思ったようで、そこから夫もちょくちょく行くようになった。
その後引っ越した今の家もやっぱり近くに図書館があったから、ますますコンスタントに通うようになり、子どものカードも作って、今や夫の方が子どもを連れてよく通うようになった。

あるとき夫がしみじみ「図書館に通うのはほんとにいい習慣だね」と言い出した。
どうやら夫は結婚するまで、図書館に通うという習慣があまりなかったらしい。
でも持っている本はそこそこあるので「え、でもけっこう本読んでるじゃん」と言うと、本は読んでいたけど、ブックオフ等で買うのが習慣で、図書館で借りるという発想がなかったのだそう。
そもそも小さいときに図書館に行ったことがないというので、私の小さい頃の話をしたら、夫の住んでいた地方では、子どもが自力で通える範囲に図書館がなかったのだという。
「あ~確かに、自転車で通える範囲に図書館があるかどうかは大きいね~」と、私も言われて初めて気がついた。
夫は「小さい頃に図書館に通う習慣があれば、大人になっても図書館に行こうっていう発想が出てくるから、子どもたちがこうして今から図書館に行っているのは経験としてかなり大きいよ」と強調していて、確かにそうかもなぁと思った。
私も小さい頃の経験がなかったら、図書館に対する敷居が高くなっていたかもしれない。

そんなわけで、最近はもっぱら本は図書館で借りている。
単純に、スペース的にうちの中に置ける量に限りがあって、それがもう限界だから。
これからはできるだけ本を増やさず、買うのはどうしても手元に置いておきたい本だけにしている。

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先日借りたのはいわゆる「鈍器本」。
1000頁以上あって、価格も5000円近くするから、こういう本こそ図書館で借りられるのはありがたい。
期限内に全部は読めないから、興味のあるところだけ読んで、またリクエストして順番を待つ。
うちの自治体は比較的早く話題の新刊を入れてくれるので、そこも夫と高く評価している。
税金の払い甲斐があるというものだ。

次男も絵本をかじらずに眺められるようになってきたから、そろそろ次男のカードも作ろうかな。