姫路とシメジ

夫の親戚から今年も桃をもらった。
それに加え、ふるさと納税の返礼品もあって、今年はかなりの桃祭り。

食べ頃の桃が冷蔵庫にひしめいているので、そういうときにしかできない、桃の贅沢食べ。
まるごとの桃を、皮を剥いてナイフとフォークで切り分けながら食べるのだ。
至福。


少し前、朝のラジオを聞いていたら「方言」に関する話がされていた。
京都出身のコメンテーターみたいな人が出ていて、「方言と思われていないけど実は方言」みたいな言葉について、例を挙げて解説(?)していた。

たとえば「行けたら行く」という言い方。
私も最近知ったのだけれど、「行けたら行く」のニュアンス(行く寄りなのか、行かない寄りなのか)が、東西で違うらしい。
関西出身の私からすると、行けたら行くは限りなく「行かない」寄りで、直前に急に気が変わったとか、予定が空いて急に行けるようになった場合は、「行くわ」と連絡を入れてから行くようなイメージだった。
もちろん、誰かから「行けたら行く」と言われた場合も「あぁ、じゃあほぼ来ないんだな」と思う。

それが、関東では完全に逆らしいのだ。
「いやいや、それはないでしょ」と思い、試しに夫に聞いてみた。
私「もし『行けたら行く』って言われた場合、特に連絡なかったら、相手は来ると思う、来ないと思う?」
夫「そりゃ来るでしょ」
え!!
「ほんとに?逆じゃなくて?」「いや、来るでしょ。だって行けたら行くって言ったんでしょ?」

衝撃だった。
じゃあ、関西人は知らずに関東人に失礼を働いていることが、めちゃくちゃあるってことではないか。

夫に「それ、関西では逆なんだよ。東と西で違うんだって」と言うと「嘘でしょ」と夫も信じない。
「ほんとだって!『行けたら行く』って言われて、何の連絡もなく相手が来たら逆にびっくりするもん。『行けたら行く』って言ってたじゃん!って」と言うと、夫「いや『行く』って言ったんでしょ?」私「いや『行けたら』って言ってるから」と、なぜか両者譲らずになりかけ、そこでようやく「ほんとに東西で違うんだ...」と納得した私たちであった。

ちなみに最近知り合った外国人のママ友(ヨーロッパ出身)から、近々近所であるお祭りについて「行けたら行きますね」というLINEがあったのだけれど、あれはどっちの意味なんだろうか。
ご主人は関東人なので、「行く」寄りなんだろうか。
何も聞かないで当日を待ってみたい。

方言といえば、夫と「シメジ」のイントネーションをめぐるやりとりがあった。
きのこのシメジのことを、夫が「シ」メジ(冒頭にアクセント)と発音するので、「シメジ(アクセントなし)ね」と言うと、「いや『シ』メジでしょ」と反論された。
ハッ、と思い出して「え、じゃあ兵庫県の『姫路』は?」と聞いてみた。
昔、九州出身の人が関西で「姫路のイントネーションがおかしい」と言われていたのを思い出したのだ。
そのときに九州の彼女が「『シ』メジと一緒でしょ?」「え、シメジもおかしい!」と言われていたのだ。

果たして夫は冒頭アクセントの「ヒ」メジであった。
「シ」メジと同じく。
関西人は、どちらも平板な「シメジ」「ヒメジ」だ。

姫路とシメジなら話は通じるからいいけれど、「行けたら行く」は、知らなかったら恐ろしい。
「行けたら行く」問題も、SNSのおかげでけっこう知られるようになってきたみたいだけれど、自分が使うときは念のため相手に「どっちの意味派?」と聞いてからにした方がいいかもしれない。