髪型迷子

ここ数年、関西に行く機会が少なくなり、かかりつけだったNさんの美容院に行く機会がぐっと減った。
それ以来ずっと「これ」という髪型がない状態が続いている。
かかりつけ美容院に出会うまで - 珈琲とsofaのあるところ

Nさんのところでは、基本的にほとんど何も言わなくても毎回いい感じにしてくれた。
それが15年ぐらい続いたので、いわゆる「オーダー」の仕方を忘れてしまったのだ。
Nさんには「伸ばしたい」「ちょっと切りたい」といった長さに関することと、「前髪のクセに悩んでいる」「ボリュームが減ってきて困っている」「今回はちょっと雰囲気を変えて気分転換したい」みたいなふわっとした希望を伝えるだけで、向こうから「じゃあこんな感じはどうですか?」と提案してくれる。
その提案も「このへんにボリュームを持ってきて」とか「長さはこれぐらいで」程度のふわっとしたもので、提案というよりは確認、といった感じ。
それなのに仕上がりは毎回間違いなくて、一、二ヶ月経ってもずっといい感じなのだ。

その感覚で今も「ちょっと切りたい」みたいなふわっとしたオーダーをしてしまう。
それでうまくいくときもあるけれど、伝わらなかったかな、というときもままある。
でもそれはたぶん美容師さんの責任ではなくて、こちらがどうしたいのか、明確なイメージが定まっていないからなのだ。

そう思うと、Nさんはデザイナー要素の多い職人だったのだと思う。
クライアントの中で明確になっていないイメージを、「こうじゃないですか?」「こういうのはどうですか?」と具体化する力がある、優れたデザイナーというか(本人に言ったら、ナルシストだから泣いて喜びそうだけど笑)。
こちらの髪質だけでなく、頭の形、毛流れを把握した上で提案してくれるので、本当に任せっきりにしていられるのだ。

髪の生えかたって、その人をその人だと認識するのにけっこう重要な役割をしているなと思う。
誰かと誰かを「似ているな」と思うときって、髪の生えかたとか、毛流れだったりすることも多い。
親子で生え際が似ているとか、襟足がそっくり、なんてこともある。
あと、最近ドラマである俳優さん(の見た目)を苦手だなと思ったことがあって、何が苦手なんだろうと考えると「髪の毛の生えかた?」と思ったり。
昔デッサンを習っていたことがあって、そのときにも確か、耳の位置や髪の生えかたを正確に描くと、その人らしく見える、みたいなことを教わった気がする。

次男は長男と頭の形や髪の生えかたがそっくりで、この写真は最近の次男だけれど、たぶんあと数年したらどちらの写真だか分からなくなるだろう。
親の好きな髪型にさせてくれるのも、あと数年かと思うとちょっとさみしい。