年末関西一人旅①

下りの帰省ラッシュピークという日に、東海道新幹線で東京から京都へ。
早めに着きたかったので、自由席の空いている席に飛び乗り、予定より一時間早く東京を出発した。

この日は富士山日和。
ただ、飛び乗ったのは通路側のD席だったから、それほど心待ちにせずうとうとしていたら、たまにある「お知らせいたします。ただいま右側の窓から...」という車掌アナウンスが入った。
ハッとして窓を見ると、いままさに富士山が一番大きく見えるあたりを通過中だった。
E席の女性が「どうぞどうぞ!」と身を引いて促してくれたので、「ありがとうございます!」と写真を撮らせてもらった。
「今日はきれいですね~」「ね~」と言い合って。

久しぶりに乗った新幹線は満席で、自由席も品川に着く前にもう空席がほぼないようだった。
私が東京駅で飛び乗った時点では、通路側はまだ空いていたのだけれど、こういうときに何も考えず慌てて空席を確保してしまうと、隣が厄介な人だった、ということがままある。
そういうとき満席だと移動もできないので、急ぎつつも慎重に隣人を見て、とりあえず同年代の普通っぽい女性の横を確保したのだけれど、この日はなんと、後ろに盲点があった。

品川を出たあたりから、ものすごい匂いのするお弁当(唐揚げ?)を食べた気配が後ろからした後、数十分に一回すごい音のゲップが何度か聞こえてきたのだ。
「最悪...」と我慢するしかなかったのだけれど、富士山アナウンスから数十分経った頃、斜め後ろから突然「お客様、おやすみのところ失礼いたします」という女性乗務員の声が聞こえてきた。
え、私?と一瞬思って振り返ったけれど、重ねて「お客様、お客様」と聞こえたので、ひとつ後ろの席の人に話しかけていることが分かった。
「お隣(E席)は誰かいらっしゃいますか?」
「いない」(高齢男性の声)
「でしたら、お荷物は膝の上か棚にお願いできるでしょうか」
「なんで?」
ここで周囲がギョッとしたのが分かった。
「...本日は満席で、お立ちのお客様もいらっしゃいますので」
「立ってればいいじゃないか」
...は?
周囲の緊張が高まるのが分かる。
乗務員、硬い声で「お席はお一人様一席でお願いしています」
「わざわざ東京まで行ったのに、~~?(聞き取れず)」
がんばれ!と心の中で、女性乗務員にめっちゃエールを送る私。
「お立ちのお客様もたくさんいらっしゃいますので」「立ってればいいじゃないか」「わざわざ東京まで行ったのに」のやりとりを二回繰り返した後、乗務員は「それとこれとは話が別ですので。お席はお一人様一席でお願いします」と言い渡して、その場を去って行った。

高齢男性が応じて荷物をどかせたのか、どかせていないのかは振り返って確かめる勇気がなかったけれど、とにかく「うわ~、早く降りたい...(または降りてほしい)」と落ち着かない気持ちに。
まもなく到着した名古屋で降りてほしかったけれど、男性は降りず。
幸い、私が降りる京都まで何事もなく過ごせたけれど、降りるときチラッと見たら、男性の隣の荷物はそのままだった。

早めに着きたかったのは、近年人気で行列必至のお店に、開店前に着いてお昼を食べたかったからなのだけれど、開店5分前に着いたら一時間以上待ちで、あえなく別の店に行く羽目になった。
次の予定(美容院)近くの珈琲が美味しい喫茶店で、軽くお昼とデザート。

予約の時間になったので、久しぶりのかかりつけ美容院へ。
かかりつけ美容院に出会うまで - 珈琲とsofaのあるところ
二年ぶりに会う美容師Nさんと秘書ちゃんは相変わらずの仕事ぶりで、かつちゃんと二年分歳をとっていた。
Nさんは白髪が増え、秘書ちゃんはお肌の弾力が年齢相応に落ちてきた感じで、でもそれは全然ネガティブなことではなくて、むしろ旧友のような、互いに一緒に歳を重ねてきた親近感のようなものを感じるのだった。

今回もあっという間に素敵な髪型にしてもらって、次は電車で大阪へ。
その前に、通り道にある雑貨屋さんで聞きたいことがあったのを思い出した。
もう十年近く前にその雑貨屋さんで貯めていたポイントカードが、まだ有効なのかどうかを知りたかったのだ。
ポイントカードはあと2ポイントでコンプリートなのだけれど、もしもう無効なら思い切って処分するしかない。

ずっと気になっていたので、雑貨屋さんに入り、店員さんをつかまえてドキドキしながら聞いてみると、あっさり「あ、まだ使えますよ。新しいカードもお渡しできます」とのこと。
なんと!まだ有効!
じゃあ、なかなか来られないこの機会に何か欲しいものがあるかどうか見てみようと、俄然急いで店内を周り始める私。
すると、ちょうど欲しいと思っていた新しいアウターの、いい感じのものがセールになっている!
試着するとまずまず。というか、たぶん良い。
思っていたタイプとはちょっと違うけれど、なかなかない形で、しかも軽く、あたたかい。
2ポイント分どころではない出費にちょっとひるむも、「こういう(探していたときに一発で出会うような)出会い方をしたものって、経験的に末長く使えるんだよな...」「なかなか見ない形だから、たぶん今を逃したら二度とは出会わない...しかもセール...」ともう一人の私が甘く囁く。
結局、数分迷った後買うことに決め、ポイントカードは無事コンプリートされた(どころか、また新しいカードに繰り越された)のだった。