北海道旅行記⑨六日目(最終日) 大雨の六花亭

前々夜、ツブ貝をつまみに飲みながら夫と相談したのは、最終日の予定だった。
今回の旅は、おおよその行きたいところを事前にピックアップしておいて、点と点をつないでいくようになんとなく一日の予定を決めるというスタイル。
ただ、最終日に関してはほとんど移動になるだろうからと、全くのノープランだったのだ。
移動だけにしても、そろそろ出発時間を決めないとね...ということで、二人してGoogleマップでルートを調べ始めた。

飛行機の出発時間から逆算し、空港から少し離れた場所へのレンタカー返却等も考えると、余裕を見て宿を10時に出発してまっすぐ空港かな...というプランに落ち着きかけたところで、夫が「そしたらさぁ...」と言い出した。
会社の人へのお土産を買うのに、空港近くのイオンに入っている六花亭に寄りたいと言う。
空港でも六花亭はもちろん買えるのだけれど、箱ではなくバラ売りしている店舗がいいと言うのだ。
道内にある六花亭の直営店舗では、好きなお菓子をバラ売りでひとつずつ買える。
それを知って以来、北海道旅行では必ずといっていいほど立ち寄るのだけれど、今回はエリア的に六花亭がなくて行けなかったのだ。
空港近くなら、早めに出れば行けるね!ということでちょっとウキウキし始めた私。

一応空港とのアクセスを調べとこう...と六花亭のサイトを開いたら、そこでもうひとつ、苫小牧に直営店があることに気づいた。
むむ、苫小牧?
苫小牧を通るルートは全く頭になかったのだけれど、調べてみると、当初予定していたルートと30分も変わらない。
二年前にできたばかりの新しい店舗のようで、しかも喫茶室があるタイプ!
予定していたルートは初日に一度通った内陸の道だったのだけれど、苫小牧経由だと太平洋沿いに走るルートになる。
同じ道をできるだけ通らず、一筆書きのように走りたがる夫に「いま見つけたんだけどさぁ...」とそのルートを提案してみたら、案の定「おぉ!それいいじゃん!」と身を乗り出してきた。
ですよねですよね。違う道を通りたがりだもんね。

そんなわけで、最終日は太平洋沿いを少しドライブしつつ、苫小牧の六花亭でお土産を買い込み、余裕があれば喫茶室で早めのお昼、というプランになった。
これで最終日にも観光(?)ができる。

こういうプランを立てているときが、旅行の醍醐味だなぁと思う。
特に、こうやってうまく予定がハマったときは一番嬉しい。

大学生の頃、ヨーロッパ旅行をしたときのことを思い出す。
その頃はまだギリギリ、旅行先の情報をネットで調べるという文化が一般的ではなくて、ガイドブックが主流だった。
あるドイツの古城を訪れたかったのだけれど、あまりにマイナーで情報がなかったのと、直前に人に勧められたので詳しい行き方が分からず、まぁタイミングが合えば...くらいに考えていた。
同行者は「無理じゃない?」と言っていたのだけれど、ヨーロッパの鉄道時刻表を借りてパラパラ見ていると、ものすごくピンポイントで行って帰って来れる鉄道の便を発見。
現地の人しか乗らないような路線で、最寄り駅から古城までの往復、見学時間を含めて、ぴったりハマる、しかも一日にほとんどない便。
時刻表の地名表記はドイツ語なので、何度も見直して確認し、最終的にちゃんと行って帰って来れたときには、それまでにない達成感があった。
自分で調べて計画を立てる旅の醍醐味というのは、思えばたぶん、このときに知ったのだ。

人によっては面倒くさいであろう、こういう旅の計画作りを、夫とは楽しく共有できる。
しかも、オリエンテーリング的に「できるだけ多くのポイントを無駄なく回りたい」という傾向も共通しているから、勢いいつも詰め込みがちになる。
子連れ旅になってさすがにお互いセーブするようにはなってきたけれど、やっぱり「ただ移動では帰りたくない」という点は一致していて、苫小牧六花亭案はそこにぴたりとハマったのだった。

ただ、最終日の天気は大雨。
六日間の旅程のうち、結局晴れと雨が半分ずつだったのだけれど、最終日が一番ひどい雨だった。
この日はほとんど車中か屋内かだったので、ラッキーと言えばラッキー。
ただそれにしてもすごい雨だった。
後で見たらちょうどすごい線状降水帯の下を走っていたようで、苫小牧あたりではほとんど冠水状態の道路を、時折噴水のようなしぶきを上げながら走る羽目になった。
車高の高い車じゃなかったら厳しかったかも。
もちろん、海沿いなのに海は全然見えなかった。

それでも無事、六花亭に到着。
予定より少し遅く到着したのと、夫の宅配手続きにけっこう時間がかかり、喫茶室は甘味のみになった。

北海道産小豆を使ったおしること、季節限定蒸し栗のなんとか。
おしるこという渋いチョイスは、五歳の長男。
最初は別のものにしようとしていたのだけれど、おしるこを指して「これはなに?」と訊くので「あんこ味の甘いスープだね」と説明すると「それにする!」
夫に似て、すっかりあんこ好きに育ったよう(笑)

もっとゆっくりしたかったけれど、空港までの道が雨でどうにかなっていても困るので、食べ終わるとすぐに店を後にした。
慌ただしかったけれど、最後の最後まで北海道を堪能した旅だった。

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今回の旅は、夫の転職のタイミングと、長男の小学校入学を前に可能になった六日間だった。
来年以降は学校を気軽に休ませるわけにはいかないし、夫もこれほど長い連休はなかなか取れないだろう。
旅行にはこれからも出かけるだろうけれど、大好きな北海道に久しぶりに行けたこと、小さい子どもたちと一緒に北海道を堪能できたのは、とっても嬉しいことだった。
夫もニセコエリアを気に入ったようで、冬にスキーに来てみたいと言っていたので、また数年以内に来られるといいなぁ。
ただし私は絶望的に滑れないから、ソリ専門で。