冬の能登① 雲上を抜けると雪国だった

一ヶ月のうちに、というか二週間足らずのうちに二度飛行機に乗るという、レアな今年の1月。
ANA創立70周年記念セールに乗っかった突然の旅第二弾は、真冬の能登だった。

飛行機を予約したのは11月の末。
そのときはとにかく予約期間内にどこか予約しなければという一心で(予約期間は三日間、本気で検討し始めたのは二日目の後半だった)、仕事中の夫とLINEで手短にやりとりしながら、とにかく普段はなかなかお得にならないマイナー路線にしたいという夫の希望で、能登空港行きを予約したのだった。

しかし、12月に入ってからふと気づく。
1月の能登なんて、絶対雪が積もってるんじゃないの...。
私は雪道の運転はしたことがないし、夫もあまり慣れていないはず。
でもこのキャンペーンは飛行機の予約変更が不可なので、現地の移動を公共交通機関でできないかいろいろ検討したものの、半島の先端を攻めたい夫が「能登ってそんなに積もらないみたいだし、先端に行きたいからレンタカーで」と言うので、夫が運転してくれるなら...とレンタカープランにしたのだった。

ところが。
その週末、名前も恐ろしい「最強寒波」が日本上空へやって来たのだった。
北陸は大荒れ。
行きの飛行機は当日朝にようやく出航判断が出て、「着陸困難な場合は羽田に引き返す」という、条件付き運航を初めて経験することとなった。

羽田出発は9時前。
マイナー路線だけあって(?)、初めて利用するサテライトというエリアからの出発。
遠いけれど新しいので施設はとても綺麗で、人も少なく、出発までを快適に過ごすことができた。

羽田上空は曇りではあったけれど、予定通りの時間に出発。
雲が多いので今回下界は見えず。

羽田-能登は水平飛行区間が実質30分ぐらいしかなくて、サービスドリンクを飲んだらあっという間に着陸態勢に入った。
間もなく着陸という段になって外を見ると、思った以上に真っ白。

針葉樹に雪が積もって、「ここは(昔行った3月の)フィンランドです」と言われたら、違和感なく信じられそうだった。

初めて降り立つ「のと里山空港」。
失礼ながら、能登半島には小松空港しかないと思っていた。
荷物レーンに寒ブリが流れてくる、のと里山空港

空港に着いたのは10時頃で、直接宿に行ってしまうと時間がありすぎるので、この日は(通常なら)車で一時間ほどのところにある、のとじま水族館に行くことにしていた。
が、意外な積もりっぷりにちょっと腰が引ける夫。
とりあえずちょっと走って様子を見てみようと、おそるおそる走り始めたところ、5分もしないときに、路肩の雪に乗り上げてにっちもさっちもいかなくなっている軽トラに遭遇した。
周りに車がいなかったので、ひとまず停まって夫が様子を見に行くと、けっこうな高齢のおじいちゃんが立ち往生していたのだった。
おじいちゃんはだいぶ地元弁だったうえ、めちゃくちゃ耳が遠かったので話が半分ぐらいしか通じなかったのだけれど、どうやら近くに農協があるから、そこにシャベルを借りに行きたいと言う。
チャイルドシートでぎゅうぎゅうの後部座席に無理やりおじいちゃんを押し込み、二百メートルほどのところにある農協に送り届け、そこにいた人々に応援要請してバトンタッチしてから、改めて水族館へと出発した。

ナビによると、水族館までの道は自動車道と下道があるようだったけれど、どちらも所要時間は変わらない様子。
そのうえ自動車道は無料のようなので、土地勘のない私たちには決め手がなく、どちらのルートでもいいやと適当に目的地設定。
が、下道を走り始めてまもなく、夫も私も危機感を抱き始めた。
雪の積もりっぷりがすごいのだ。
車の通った跡がないので、このまま走ったら間違いなくさっきのおじいちゃんになる。
「たぶん自動車道は除雪されてるよ。さっきのおじいちゃんはそれを教えてくれてたんだよ、きっと」ということで、適当なところでUターンし、自動車道に入った。
これは大正解で、除雪された道を、それでも時速40kmぐらいで慎重に進んだ。

ところが、まもなく水族館最寄りのインターを降りると再び深い雪。
ハンドルを取られまいと力を入れながら、夫が「これはちょっと...こういう道が続くなら、ちょっと水族館はやめときたいかも」と言い出した。
えっ、ここまで来て?
と思ったけれど、水族館への往復プラス、宿までも同じくらいの距離があるので、運転手がそう言うのなら反対はできない。
ひとまず道の駅に停車し、お店の人に道の様子を聞いたり、水族館に電話したりした結果、五分五分かな...という状況だったので、渋りつつも夫はなんとか運転を続け、お昼頃にようやく水族館までたどり着いたのだった。