ぱいぱいのひも

4月半ばのこと。
小学校の給食がいよいよ始まり、食事道具もろもろを入れる「給食袋」という袋を持たせることになった。
買ってもよかったし、ちょうどいいサイズの私のミニバッグもあったのだけれど、十年くらい前に買ったIKEAの布がちょうど使い切れるサイズだったので、えいやと腰を上げて手作りすることにした。

一応絞れるよう紐もつけておこうと思い、「確かちょうどいい紐があったはず...」と探したら、輪っかに結んだものが出てきた。
確かに見覚えがあるのだけれど、はて、これ何だったっけ...?なんで輪っかにしてたんだっけ...?

しばらく考えていて「あー!」と思い出した。
これは、次男の授乳のときにしょっちゅう使っていた、手作り便利グッズだったのだ。

産後ケア施設の助産師さんに教えてもらったもの。
前開きでない、プルオーバータイプの服を着ているときに使う。
ネックレスのように首にかけ、襟ぐりから服の中に入れて裾から紐を出し、それを再び首にかけると、ちょうど服がめくれ上がって授乳しやすくなるのだ。
授乳するときは服が赤ちゃんの顔にかからないよう、常に手で押さえていないといけないけれど、これがあれば押さえている必要がなくて、手が楽ちんなのだ。

この紐を、一日中ネックレスのように首からかけている時期があった。
数時間おきに授乳していた、次男がまだ生後半年にも満たない頃だ。
その頃自分がよく着ていた服や、テーブルの上の景色、次男の重さまで思い出す。
テーブルの上には乾かし中の哺乳瓶や搾乳機、授乳後に足す作りたてのミルク、ガーゼ、授乳時間記録用のボールペンと用紙、授乳する私の水分補給用のコップなんかが置いてあって、いつもテーブルが雑然としていた。

まだまだ「産後」だったその景色を思い出すと、懐かしさに涙が出そうになった。

出来上がった給食袋を見て、長男が「あぁ、ぱいぱいのひもは給食袋になったんだね」と言った。
赤ちゃん次男の食事を支えた紐は、小学生となった長男の給食袋に生まれ変わったのだった。