馬そっちのけ

一年の1/3ぐらいが夏、それも半端ない暑さになりつつある中、屋外で気持ちよく過ごせる時期は限られている。
その中で晴れの(もしくは雨でない)貴重な週末は、できるだけ外に出かけようということで、前々から行きたかった東京競馬場へのおでかけを決行した。

とはいえ、お目当ては競馬そのものではない。
競馬場といえばひと昔前は子連れで行けるような場所ではなかったと思うけれど、昨今は競馬人口を増やすためなのか、ファミリー層の取り入れにずいぶん熱心で、東京競馬場は人気の子連れおでかけスポットなのだ。
大型遊具のあるキッズエリアや、乗馬体験、馬車乗り体験、馬とのふれあい等々いろんなお楽しみ企画があって、入場料一人たったの200円で一日遊べるという。
私は馬を見るのも好きだし、スポーツと同じでやっぱり生観戦は臨場感があって楽しいので、子どもたちを一度連れて行ってあげようと思っていたのだった。

競馬には昔一度だけ、詳しい人に連れて行ってもらったことがあるものの、馬券とかのシステムはきれいさっぱり忘れていた。
今回は特に馬券を買うつもりもなかったのだけれど、ちょうどキャンペーン期間で、スマホ登録か何かをすると入場料が100円になるうえ抽選券がもらえ、馬券を買わないとその抽選券が使えないということで、じゃあ一枚買ってみるか、ということになった。
馬券は100円から買えるのだ。

とはいえ、夫も私も馬券の買い方すら分からない。
一日に何レースかあって、そのレースごとに馬券を買う...というところまでは覚えていたけれど、周りを見ても、マークシートみたいな用紙を塗っている人、自動販売機みたいなので何かを買っている人、モニターを見ながら熱心に考えている人、いろいろいてさっぱり分からない。
人をつかまえて訊くことへのハードルが低い(と夫に思われている)関西人の私が、スタッフの制服を着たおばちゃんに訊きに行くことになった。

「競馬は全然分からなくて、今日はただ行楽で来たんですけど、抽選券を使うために馬券が必要ということなので、買い方を教えてください」ととりあえず全部丸投げして訊いてみたら、初心者用のパンフレットを持ってきてくれたうえ、親切に口頭でも教えてくれた。
聞いていると、あ、このおばちゃん、競馬が相当好きなんだろうなというのが分かってきた。
ニュートラルに教えてくれているのだけれど、ちょっと突っ込んで質問してみたときの答え方が、ヨドバシとかのめちゃくちゃ詳しい店員さんみたいなのだ。
客の知識レベルを瞬時に測って、それに合わせてできるだけ簡単に解説してくれる、でもその口調に対象への愛みたいなものが溢れ出ていて、これを好きな仲間を増やしたい...みたいな情熱を感じるというか(穿ちすぎ?)。
でもわざわざ競馬場で働くぐらいだから、競馬がすごく好きなんだとしても不思議はない。

かくして簡にして要を得た解説を聞き、無事馬券購入に成功した。
余ったマークシートと鉛筆を息子にあげたら、メモ帳が好きな息子は大喜びで何やら書き付けていて、ベテラン競馬ファンの風情。

一番単純な単勝の馬券にし、息子に「何番にする?」と聞いたら「4番!」と好きな数字を答えたので4番にしたら、4番はどうやら最有力の馬だった。
だけどこの日の4番はまったくふるわず、あえなく馬券は紙屑に。
抽選で外に座れる座布団みたいなものがもらえたから、まぁ元は取れたけれど。

その後は早めのお昼を食べて、キッズエリアに移動。
東京競馬場には、屋台みたいなのから高級レストランまで数十軒の飲食店が入っている。
メインの建物はちょっとしたテーマパークのようで、初めて来た夫は「競馬場ってここまでいろいろあるんだ...馬の走るとこだけだと思ってた」と驚いていた。

メインの楕円形のスタジアムみたいなところの地下にある通路を抜け、向こう側に行くと、入り口側からは見えなかっためくるめく一大ワールドが広がっていた。

親子で乗れるミニ新幹線というのもあったりして、普通に料金を取ってもいいレベル。
競馬のスターティングゲートを模したブランコが可愛い。

大型遊具でひとしきり子どもたちを遊ばせる。
なんといっても「競馬場」という囲われた場所なので、オープンな公園と違って交通事故の心配も子どもが行方不明になる心配もなく、小学生も幼児も一緒に遊ばせられるので、東京競馬場がファミリーに人気のスポットだというのも大いに納得だった。
どこも掃除が行き届いているし、キッズエリアには子ども用のトイレまであるし、競馬開催期間は屋台っぽい出店もあって、お祭りのよう。

最後はミニ新幹線に乗車。
踏切もあって、ほんとに遊園地みたい。

今回は初めてだったから何も用意していなかったけれど、レジャーシートやお弁当を持ってくれば、気候のいい時期は大人も子どもも楽しめそう。
思った以上に一日遊べるスポットだった。